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産業医・渋谷雅治の事件カルテ シークレットノート

著者:梶永正史



大手電機設備製造会社の産業医である渋谷雅治は、その会社の営業マンが自殺したことを受け、再発防止のための実態調査を依頼される。自殺した社員・長田は非常にまじめな性格で、勤務状態を見ても長時間の残業などは見当たらない。だが、妻は最近、帰宅が遅くなっていたと証言する。そんな中、ある社員が、永田が妻ではない女性とホテルへ行った、という証言が出てきて……
文庫裏表紙の粗筋……ネタバレし過ぎじゃない? という気が……
自殺した営業マン。真面目で不器用で、しかし、その一生懸命さもあって成績は上位であった長田。色々とあった結婚だが、家庭は円満で、自殺する理由は見当たらない。そんな中で浮かび上がった浮気、と思われる行動。勿論、真面目そうな人が実は……なんていうのは、よくある話。しかし、何かしっくりと来ない。しかし、会社は、仕事に関することではない、と結論付けようとしている。そんな中で、長田が白木文書なるものを探していた、という証言が出てきて……
当初の印象から変遷していく自殺した長田の印象。さらに、白木文書とはいったい何なのか?
長田が中心になって進めたプロジェクトに関わる問題。白木文書に近づくにつれて強くなっていく会社の圧力。ついには、産業医としての職を解かれるまでに至ってしまう。しかし、それでも、調査を続けた渋谷がたどり着いた真相は……
会社内にはびこる派閥争い。さらに、上層部にある「合理性」と言う名の便利な言葉。そんな中で孤独に戦いをした長田の苦闘。しかし、信頼していたはずの存在に、全てをひっくり返された長田の絶望感は想像するに余りある。さらに、物語を進めていく中で、会社内の人間関係とか、そういうものに対して抱いていた印象が全てひっくり返っていく様が見事。終盤の渋谷と黒幕の対戦は、渋谷自身が言うように、推測に過ぎないものではあるのだけど、会議の場、という裁判とは違った形での戦いであり、これはこれで納得のいくものだった。
長田の死の謎を追う、という意味では間違いなくミステリー作品なのだけど、雰囲気とするとビジネス小説みたいな雰囲気もある作品だったなぁ、というのも感じる。

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Tag:小説感想梶永正史

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