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スパイ教室05 《愚人》のエルナ

著者:竹町



スパイ育成学校の落ちこぼれで結成されたチーム『灯』。苦難を乗り越え、クラウスの試験にも合格した彼女たちは……任務失敗を続けていた。そんな中、灯の前に現れたのは、育成学校のトップ6で結成されたチーム『鳳』。その鳳のリーダー・ヴィンスは告げる。「寄越せ――お前たちのボスを」
なんか、ちょっとこれまでとは物語の雰囲気が違うな、と感じた第5巻。
物語は、冒頭に書いた通りの形で開始。クラウスを倒す、という課題をクリアし、スパイチームとしての活動を開始した灯だったが、いざ、任務に入れば失敗続き。リリィはドジばかり。アネッサは我が道を行き、ジビアは作戦を理解しないままに暴走。さらに、クラウスがトップクラスと認めているグレーテ、モニカは、他のメンバーのミスをフォローすることで精いっぱい。とてもではないが、力を発揮できている、という状況ではない。
そんなところに現れた鳳。クラウスから見ても、それぞれ一流で、単独でも強い能力を秘めている。そんな彼らの弱点は、ボスがいない、ということ。そこで、鳳のリーダー・ヴィンスが要求したのは、クラウスにボスとなってもらうこと。客観的に見て、灯より、鳳の方が上なのは事実。そこのボスにクラウスがなる、というのは合理的そのもの。そんな中、クラウスがどちらのボスになるのか、を巡って対決が始まる……
作中でも、チーム同士の連携とかはあまりない、と言われているんだけど、それでも、やっていることは結構、無茶苦茶な気はする。本来、同じ国のスパイチームなのだから、協力すりゃ良いのに、双方が敵陣の中で対決しているわけだし。そういう意味では、何をしているんだ? という気はする。
ただ、そんな対決の中で、ヴィンスが灯の最大の穴、として評したエルナを中心に物語が展開していく。元々が、落ちこぼれ。しかも、不幸体質と言われるように、なぜか任務中、彼女を狙うかのように不幸な出来事が発生する。弱点である、というよりも完全な穴。鳳のリーダー・ヴィンスは、そんな彼女を倒しにかかるが……
「騙す」がこのシリーズのコンセプトなだけに、エルナの事情というのは何となく察することが出来たのだけど、ただ、そんな存在であるエルナをも「仲間」として認め、共に戦う灯の面々。そんなそれぞれの思いに応えるかのように奮闘するエルナ。さらに、クラウスが言うように、長所と短所がはっきりしている灯の面々の、その絆と言うのが強く印象に残る。この辺りは間違いなく、シリーズを重ねたからこその描写だろう。
クラウス争奪戦自体は無事に終結したわけだけど、その終わり方が……。次巻、物凄い波乱の展開が待っていそう。

No.5872

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Tag:小説感想竹町富士見ファンタジア文庫

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