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(書評)凍える島

著者:近藤史恵

凍える島 (創元推理文庫)凍える島 (創元推理文庫)
(1999/09)
近藤 史恵

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「無人島とはこれまた古風な」 友人のなつこと共に喫茶店・北斎屋を経営するあやめは、その店員、お得意さまを合わせた8名で、瀬戸内海の島・S島へと慰安旅行に出る。かつて、新興宗教の聖地だったというその島での1週間。それぞれの想いを持つ中、一人、また一人と…
自ら「これまた古風な」と始まり、随所に「由緒正しい」などと題された作品。確かに、孤島に集まった男女、一人、また一人と殺されていく…と言う展開は、「お約束」「古風」と言う言葉が似合うのは間違いない。
そんなわけで、物語の展開そのものは、非常に「古風」。わざわざ言わなくとも良いくらいに、「ベタ」に突き進む。けれども、その中に常に流れる雰囲気、常に流れる空気、そういうものの独特さがこの作品を特徴付けているように思う。
妻のある詩人・鳥呼との関係を持つあやめ。今回は、その妻も、島へと同行する。8人ではあるが、その中にある非常にドロドロとした人間関係。そんな人々の想い。「ノート」のことを「ノオト」なんていう風に綴る、その文体。そういうものを用いて、ベタながらも、独特の世界を作り上げている。その味わいこそが、この作品の何よりもの良さではないかと思う。
作品としての基礎もしっかりとしていて、仕掛けによるどんでん返し、そして、本当の真相へ。文庫で270頁あまりと、分量は短めながら、しっかりと練られた構成も良い。
「古風」「ベタ」、そんな言葉で象徴される題材ながら、それを上手く著者の世界観へと昇華させている佳作だと思う。

通算1284冊目

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