著者:殻半ひよこ

早逝した大作家が残したのは、5冊の著作と丘の上の一軒家。売れない高校生作家の進太郎は、父の残したその家でりやなさんと出会う。「きみをわたしにくれたなら、きみがいちばん欲しいものをそそいであげる」 そうして唇を奪われた瞬間、素晴らしい小説のアイデアを閃くのだが、進太郎は執筆を拒否して……
最初に書くと、りやなさんは、リャナンシー。男性からの愛を欲し、受け入れてくれた相手に芸術の才能を授ける。しかし、精気を吸うため、その男性は短命になってしまう、というアイルランドの妖精。進太郎の前に現れ、その父に才能を与えていたのは、そんな存在であった……
タイトルなどから想像していた話とは大分、違っていたな、というのがまず思ったこと。
だって、このタイトル、イラストからすると、自分を愛してほしい、というりやなさんと、それを絶対に拒否する進太郎のドタバタもの、ラブコメという印象が出来るでしょ? そういう部分が全くないのか? と言えば、ないわけではないのだけど、創作とか、そういうものに関しての物語になっているから。
精気を吸われる云々はともかくとしても、あくまでも「自分の作品」を書きたい進太郎。だからこそ、りやなさんの誘惑に抗う(結構、悶々としながら) そして、先輩作家、編集者、人気イラストレーター……などのアドバイスを聞いたりしながら創作を進めようとする。そして、りやなさんも、ならば自分で小説を……となるが……
まず、りやなさんの小説執筆に関しては、自分は小説を書こう、と特段、思ったことがないのだけど、「こういう表現をしたい」とかはあっても書けない、みたいなのってわかる。プロットと実際の小説の違い、というか、理想と現実と言うか、アイデアはあっても作品にならない、っていう苦悩は、多分、それっぽいことをしたことがある人は「うん、うん」となるんじゃないかと思う。
一方の進太郎。父という存在があることで、拗らせてしまった部分はあるのだろうけど、それでも、父を超えたい、という部分はまっすぐ。その一方で、書きたい物語と、売れる物語の間にある葛藤。商業出版をしている以上、小説は商売であるわけだし、「売れない」というのは問題にもなる。でも、自分が描きたいものを描かずに良いのか? という思いもある。この辺りは、恐らく、創作をしている人には必ずある問題なのだろうと思う。
そんな進太郎の葛藤と、りやなさんの、自分で描いてみるが、だんだんと重なっていって……
正直なところ、かなり色々と詰め込んでいるので、多少、取っ散らかり気味な部分はある。進太郎も、本名表記だったり、筆名表記だったりで、多少、読みづらく感じた部分もある。その辺りが欠点とも思う。それでも、その中で描かれる創作の苦しみとか、そういうものは十分に感じられた。
No.5967

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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最初に書くと、りやなさんは、リャナンシー。男性からの愛を欲し、受け入れてくれた相手に芸術の才能を授ける。しかし、精気を吸うため、その男性は短命になってしまう、というアイルランドの妖精。進太郎の前に現れ、その父に才能を与えていたのは、そんな存在であった……
タイトルなどから想像していた話とは大分、違っていたな、というのがまず思ったこと。
だって、このタイトル、イラストからすると、自分を愛してほしい、というりやなさんと、それを絶対に拒否する進太郎のドタバタもの、ラブコメという印象が出来るでしょ? そういう部分が全くないのか? と言えば、ないわけではないのだけど、創作とか、そういうものに関しての物語になっているから。
精気を吸われる云々はともかくとしても、あくまでも「自分の作品」を書きたい進太郎。だからこそ、りやなさんの誘惑に抗う(結構、悶々としながら) そして、先輩作家、編集者、人気イラストレーター……などのアドバイスを聞いたりしながら創作を進めようとする。そして、りやなさんも、ならば自分で小説を……となるが……
まず、りやなさんの小説執筆に関しては、自分は小説を書こう、と特段、思ったことがないのだけど、「こういう表現をしたい」とかはあっても書けない、みたいなのってわかる。プロットと実際の小説の違い、というか、理想と現実と言うか、アイデアはあっても作品にならない、っていう苦悩は、多分、それっぽいことをしたことがある人は「うん、うん」となるんじゃないかと思う。
一方の進太郎。父という存在があることで、拗らせてしまった部分はあるのだろうけど、それでも、父を超えたい、という部分はまっすぐ。その一方で、書きたい物語と、売れる物語の間にある葛藤。商業出版をしている以上、小説は商売であるわけだし、「売れない」というのは問題にもなる。でも、自分が描きたいものを描かずに良いのか? という思いもある。この辺りは、恐らく、創作をしている人には必ずある問題なのだろうと思う。
そんな進太郎の葛藤と、りやなさんの、自分で描いてみるが、だんだんと重なっていって……
正直なところ、かなり色々と詰め込んでいるので、多少、取っ散らかり気味な部分はある。進太郎も、本名表記だったり、筆名表記だったりで、多少、読みづらく感じた部分もある。その辺りが欠点とも思う。それでも、その中で描かれる創作の苦しみとか、そういうものは十分に感じられた。
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