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MR

著者:久坂部羊



大阪に本社を置く中堅製薬会社・天保薬品。その堺営業所の所長・紀尾中とその部下のMRたちの奮闘を描く物語。
うーん……MRってこんなんなの? という感じが……
製薬会社の一種のセールスマンであるMR。薬品などについての専門知識を持ち、その知識をもとに医師、医療機関に薬品の説明などをして売り込む。さらにその医師などからの要望とか、指摘などを聞いて薬品の改良などにフィードバックする……。そんな知識はあるのだけど、それ以上のことはよくわからない、というのが自分の知識。
で、物語は最初は、営業所の面々の紹介のような形で始まる。知識の更新をしない医師。傲慢で、セクハラ、パワハラなどをする医師。そういう医師などを時になだめすかし、時に問題点などを指摘し……で売り込みをしていく。各章が20頁弱。それを2章くらいで一つのエピソードとして問題を解決していくところは素直に楽しかった。
が、中盤から高脂血症の薬品を巡ってライバル会社との対決になって様子が変わっていく。プレゼン資料の入れ替え、研究者の裏切り工作、さらにデータの改竄……。そういったライバル会社の工作と、それに立ち向かうという展開になっていく。なんか、この辺りから、MRの話なのかな? という感じがしてきた。ライバル会社の不正を見破るために、その研究所に行ったり、開発資金の流れを追ってみたり……完全に探偵業という感じ。というか、製薬会社なんだから、法務部とか開発部とか、そういう部署とかあるんじゃないのかな? なんかすべてをMRがやっている、っていうのにどうしても違和感を覚えざるを得なかった。
著者の作品を結構読んできて、MRという存在を主人公にした、という点では目新しかったのだけど、中盤からの展開は上に書いたように、それはMRの仕事か? という感じになり、終盤は会社内でのゴタゴタといつもの著者の作品という感じになってしまったな、という感じ。最終的に、紀尾中たちが、という流れは痛快ではあるのだけど、中盤からちょっと白けてしまった。序盤のエピソードの連作短編集みたいなものだったら素直に面白かったんだけどなぁ……と言うのが素直な感想だったりする。

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