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原因において自由な物語

著者:五十嵐律人



ミステリー作家・二階堂紡季には誰にも言えない秘密があった。それは、大学時代のサークル仲間で弁護士の遊佐想護の作るプロットを元に作品を書いている、ということ。そんな想護のプロットを元に書いた作品が、1年前に起きた高校生の転落死事件に酷似している、ということを指摘される。理由を問いただそうとする紡季だったが、想護は意識不明の状態で発見され……
著者は現役の弁護士ということで、デビュー2作は法律関連のネタで出していたのだが、本作は、想護が弁護士、そして、スクールロイヤーをしている、という設定はあるけれども、ゴリゴリの法律関連の話、というわけではない。
あらすじで書いた部分だと、紡季の物語という感じで、それは間違っていないのだけど、物語の第1章、第3章は高校生の描写で綴られる。なので、最初は、作家である紡季と、少年たちがどう繋がるのか、と思ったのだけど……。冒頭に書いたようなことが判明し、物語が紡季視点に統一され、だんだんとテーマが表に出てくる。
そのテーマというのは「いじめ」。
この世界では、顔写真を偏差値化するアプリが流行。さらに、それを利用したマッチングアプリも……。その中で、底偏差値とされてしまった少年。色覚異常を抱えた少女。そして、今現在、イジメにあっている少女……。そんな彼らの思い。まぁ、このアプリがまずクセモノだよな……。顔の美醜とかって、無論、ないわけではない。でも、それを数値という、一見、客観的に見せるものでコーティングすることで人々の意識が鮮明化する。そして、それは攻撃をしても……という意識へと。
そして、「いじめ」というものの考え方。作中、「いじめというのは、人数限定のウィルスのようなもの」 すなわち、ある人物が対象になると、そこへいじめの負荷が一気にかかる。そして、その対象が抜けると、そのウィルスは他の人間に感染し、攻撃対象となっていく……。100%同意できるわけではないのだけど、でも、学校というある意味、窮屈で押し付けられるような世界。その中で、たまった鬱憤がどこへ向かうのか、という考え方をすると、そういう部分というのもあるのだろう、という気がする。そして、転落死をした少年がしようとしていたこと。一方で、スクールロイヤーとして、想護がしていたこと。その中での憎悪……
想護のしようとしていたことは、ある意味では、一人一人に寄り添うようなものと言える。でも、先の理論では、それをすることで新たな被害者が生まれる、ということも意味してしまう。その辺りの匙加減、というか、本当に救いと言えたのか……
紡季の、作家としての苦悩とか、そういう部分も物語のテーマではある。あるのだけど、事件全体の構図とか、そういうものを考えると「いじめ」に関するアレコレという部分が非常に印象に残った。

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Tag:小説感想五十嵐律人

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