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溺れる月

著者:新野剛志



「明日のレースには負けなさい。さもなければ、ひとが死にます」 ランニングサークルでの、仲間たちと賭けレースにはまっているインテリア会社社長・高木の元へ届いた一通の手紙。まさか、そんな思いで無視をした高木だったが、翌朝、レースを行った公園近くで男性の他殺体が発見される。しかも、その男性は、高木の学生時代の友人で……
読み終わってみると、前半と後半で全く違うカラーの作品になったなぁ、という印象。
前半は、冒頭に書いたような形で物語が進展する。ランニングサークル内で賭けレースをしている。厳密に見れば確かにそれは違法行為。しかし、掛け金は一人1000円。総額でも一万円弱という仲間内の些細な遊び。そんなものに脅迫状を出してどうなると言うのか? そして、殺人をする必要というのはあるのか? また、被害者は高木の大学時代の友人。けれども、大学を卒業以降は没交渉。本当に脅迫状と友人の死は関りがあるのか? そんな疑問も浮かぶ。
それでも関わりがあるのか、とそれとなく殺された友人について調べ始める高木。勿論、警察には賭けレースをしていることは隠しながら……。日常の業務などをしながら進める調査。サークルの仲間とのレース。その中でサークルの周辺での奇妙な出来事。そして、ネット検索をする中で発見したある事実……
実は、中盤で脅迫、そして、事件の真相というものは明らかになる。ところが……
会社において、創業者であり会長でもある義父との確執。インターンとしてきた大学生との火遊びの始末。その中、サークル内での遊びが、実はネット上で話題になっていた。サークルというものはありつつも、一人で走っていた高木。そんな彼に向けられていた声援。その存在が、彼をますますランニングへと駆り立てていく。しかし、それはますます会社内での、家庭での確執を招く。それでも、だからこそ高木は、その声援を求め、もっと非合法な方向へ動いてしまう。
何か苦しいことがあるからこそ、現実逃避のように趣味(?)へとのめりこむ。反対されればされるほど、執着が強くなってしまう。その気持ちはわかる。前半の、友人の死を巡っての調査の中、やたらと入っていた日常業務などがメインになっていく様は圧巻。ただ、その一方で、事件の裏を知るまでのことがあまり描かれていないため、ちょっと極端にも感じた。人によっては、というか多くの人は、自分の私生活などを覗き見られたことに反発を覚えたり、なんていうのだってあるんじゃないかと思うし。
主人公の気持ちがわかるような、わからないような……そんな部分も残ったかな。もうちょっと、前半の高木の心情を掘り下げてくれても良かったかな、とも思った。

No.5998

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Tag:小説感想新野剛志

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