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ブレイクニュース

著者:薬丸岳



ユーチューブで人気を集める『野依美鈴のブレイクニュース』。児童虐待、8050問題、冤罪にパパ活、ヘイトスピーチ……様々な問題について独自取材をもとに配信するそれは、多くの注目を集める一方で過激さ故に多くの批判も集めている。経歴も年齢も不明な野依美鈴を巡って憶測も飛ぶ中、今日もまた、配信が始まり……
という連作短編形式の物語。
物語としては、最近、話題などにもなっているトピックスを題材にした物語を重ねる形で、最終的にはその配信者である野依美鈴とは何者か? という部分にフォーカスが当たっていくのだけど、各編、それぞれの問題などに関する話になっている。
その中で印象に残ったエピソードは2編目『巣立ち』。老夫婦からの取材依頼を受けた美鈴。80代になろう、という夫婦の息子は50代になるが、19年前から引きこもり状態になっている、という。そんな一家の生活を取材することになるのだが、カメラマンを引き受ける樋口もまた、同様の過去を持っていて……
引きこもりの問題。怠けている、とか、甘やかしている、なんていう言説がよく聞かれるけど、本人にしろ、家族にしろ地獄の想いをしているのは確か。そして、「出ろ」と言っても現実問題として就労などの問題がある。さらに当然、きっかけも存在する。その夫婦の息子がそうなったきっかけ……。正直なところ、自分自身も似たような形で鬱に近いところまで行ったことがあり、その苦しみとか、そういうのが凄く共感できる。家族が何気なく言う、本人の望みとは違う希望。それに応えねば、というプレッシャー。それすら「甘え」という人はいるかもしれない。でも……。物語の形として「ニュース番組」のような形をとっているため、それぞれの話について、「なぜそうなったのか?」などはわかっても、解決とはいかない。その辺りも含めてノリアリティを感じる。これは、各編に共通することと言えよう。
その上で、各エピソードを読む中で感じるのが、個人のネット配信だからこその強みと危うさ、だろう。
昨今のユーチューバーの暴走とか、そういう部分は、組織とか、そういうものの歯止めがないから、と言える。そして、方向性こそ違うが、美鈴のそれも似たような部分を抱えている。だからこそ、批判も受けるが、視聴者も伸びる。だからこそ、エスカレートもする。そんなバランスの上のもの。一方で、では組織は、というと……それが最終編。美鈴の正体。彼女が配信を始めた理由……
組織ではないからこそできた……とは言える。理屈としてはわかるのだけど……引っ張った割には、ちょっと弱い印象はあるかな? 周辺で美鈴の正体を探る部分とかは出ているものの、具体的な話は終盤のエピソードのみだし、ユーチューブ、というか動画配信の世界とかを見ていても、ラストシーンほど盛り上がるのか? というと、そこまで盛り上がるとも思いづらいし……
(著者の意図も含めて)やりたいことはわかったのだけど、ちょっと唐突感もまた感じた。

No.6006

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Tag:小説感想薬丸岳

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