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おどろしの森

著者:滝川さり



念願のマイホームを手に入れ、幸せの絶頂にいる尼子拓真。だが、その購入した新築一戸建てで、なぜかお香のような香りと、着物を着た女の姿を見るようになってしまう。だが、妻、そして、高校生の娘はそんなものは見えないという……。一方、高校に入りイメージチェンジを果たした拓真の娘・祐希。クラスメイトとの日々を楽しむが、常に金欠状態。そんなとき、仲間の一人からパパ活に誘われて……
途中までは凄く面白かったんだけどな……と言う感じかな?
物語は、宅真、祐希、そして、宅真が上司に連れていかれたガールズバーで知り合う霊能力を持つという美也の視点で展開していく。
念願のマイホームを購入したものの、そこで奇妙な出来事に遭遇するようになった拓真。自分には女の声や姿が見えるが、妻たちには見えない。そんなはずはない、と霊能力者を呼ぶものの、霊能力者の女も何もないという。だが……。そんなとき、幼い息子は、自分と同じことを言い、さらに家にやってきた同僚の男も……。この現象は男にしかわからない!? そう確信していくのだが、しかし、妻はますます奇妙な目で見るようになっていく。その怪異は何なのか? なぜ男限定なのか? そんな謎と、家族の中で自分だけが孤立していく、というストレス、もどかしさ。その「嫌さ」というのはなかなか楽しい。
一方の祐希。地味だった中学時代から一変したものの、付き合いの中で常に金欠。そこで勧められたパパ活。一種の売春なんて、という思いがありながらも、付き合いは続けたい。紹介された男は、紳士的。そのため、だんだんと忌避する想いは薄らいでいくのだが……。こちらは、怪異というよりも、社会問題とかそういうのを題材にした形。常識的に考えて、ダメな方向に進んでいるわけだけど、本人は気づかない。いや、気づいてはいるのだけど、目を瞑っている。読者からすれば、その危なっかしさが気になっていく……
そして、そんな状況の中、なぜか「見える」存在が増えていき……拓真だけでなく、祐希の周辺でも異変が。そして、美也が話に絡んでくるのだが……
「見える」存在がどうやって広がっていくのか? その怪異の正体が何なのか? そういうものはしっかりと説明されてはいる。いるのだけど、イマイチ、祐希周辺へと飛び火した理由が納得できなかった。「多分こうだろう」とは思うけど。さらに、怪異の正体がはっきりしたなら、それをどう収めるのか、ではなくて、文字通りのバトルモノになってしまうのはちょっと拍子抜け。様々な因縁とかが怪異にあるのだから、その決着のさせ方も工夫してほしかった。
終盤の落としどころがちょっと勿体ないな、という印象。

No.6007

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Tag:小説感想角川ホラー文庫滝川さり

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