著者:牧野圭祐

東西二大国による月面着陸への共同計画「サユーズ計画」。計画が着々と進む中、共和国の宇宙飛行士レフは、イリナへの想いを告げるべく、彼女の故郷へ赴くことを決意する。一方、連合王国のバートとカイエは共和国製の宇宙船を王国製のコンピュータで制御するという難題に立ち向かう。
シリーズ完結編。
「宇宙への想い」
そんな部分が凝縮された物語が最後まで貫かれていたな、というのが何よりも思ったこと。
まずはレフとイリナ。計画が進む中、なぜかぎこちなくなってしまった二人の関係性。しかし、レフのイリナへの思いは本物。だからこそ、一度、イリナの故郷へと向かうことに。自分は裏切り者、という負い目があるイリナは、故郷へ戻ることを躊躇する。しかし、そこでの思わぬ歓待。その中で、イリナは自分のやっていたことの意味を知る。一方、レフは、そこで自分の想いを告げる。共和国の「英雄」として祭り上げられるレフなど、政治的意図の中で動かざるを得ない二人。しかし、それでも……
一方のバートとカイエ。こちらはある意味、最初から結ばれているようなものなのだけど、その中での二人の気遣い。共和国製の宇宙船に、王国製のコンピュータで、というのは至難の業。それを成功させるためには、カイエの常人離れした計算力が必須。しかし、それはカイエに相当の負担を強いることになる……。カイエのことを心配しつつ、しかし、同時に信頼をしているからこそ……。そして逆もまたしかり。こちらは、既に築かれた信頼をしっかりと確かめる、という印象の強いパートだった。
前巻の最後で、共和国側で活動していたリュミドラが暗殺され、そして、共和国の在り方を巡る陰謀などもある。レフ、イリナもそことは無縁ではいられない。そんな背景がありつつも、しかし、計画はいよいよ最終段階、打ち上げへ……
それまでの政治的な背景などがあった計画。だが、いざ、それが始まると国も思想も関係なくただただ成功へ、という思いで一致する。様々な困難は想定していた。しかし、それでも次々と起こるトラブル。だが、それすらをも乗り越えて……。1巻のときも、ただの「実験材料」であったイリナだったけれども、そんなことは関係なくなった、という形で終わるのだけど、最終巻もそんな印象。
結構、政治的な思惑とかについてはそのままに終わった感じはある。だからこそ、レフとイリナの今後にも色々と障害はあるだろう。でも、そういうものを乗り越える覚悟も、可能性もあるのだろう。そういう風に感じさせる余韻が残る。
No.6014

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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東西二大国による月面着陸への共同計画「サユーズ計画」。計画が着々と進む中、共和国の宇宙飛行士レフは、イリナへの想いを告げるべく、彼女の故郷へ赴くことを決意する。一方、連合王国のバートとカイエは共和国製の宇宙船を王国製のコンピュータで制御するという難題に立ち向かう。
シリーズ完結編。
「宇宙への想い」
そんな部分が凝縮された物語が最後まで貫かれていたな、というのが何よりも思ったこと。
まずはレフとイリナ。計画が進む中、なぜかぎこちなくなってしまった二人の関係性。しかし、レフのイリナへの思いは本物。だからこそ、一度、イリナの故郷へと向かうことに。自分は裏切り者、という負い目があるイリナは、故郷へ戻ることを躊躇する。しかし、そこでの思わぬ歓待。その中で、イリナは自分のやっていたことの意味を知る。一方、レフは、そこで自分の想いを告げる。共和国の「英雄」として祭り上げられるレフなど、政治的意図の中で動かざるを得ない二人。しかし、それでも……
一方のバートとカイエ。こちらはある意味、最初から結ばれているようなものなのだけど、その中での二人の気遣い。共和国製の宇宙船に、王国製のコンピュータで、というのは至難の業。それを成功させるためには、カイエの常人離れした計算力が必須。しかし、それはカイエに相当の負担を強いることになる……。カイエのことを心配しつつ、しかし、同時に信頼をしているからこそ……。そして逆もまたしかり。こちらは、既に築かれた信頼をしっかりと確かめる、という印象の強いパートだった。
前巻の最後で、共和国側で活動していたリュミドラが暗殺され、そして、共和国の在り方を巡る陰謀などもある。レフ、イリナもそことは無縁ではいられない。そんな背景がありつつも、しかし、計画はいよいよ最終段階、打ち上げへ……
それまでの政治的な背景などがあった計画。だが、いざ、それが始まると国も思想も関係なくただただ成功へ、という思いで一致する。様々な困難は想定していた。しかし、それでも次々と起こるトラブル。だが、それすらをも乗り越えて……。1巻のときも、ただの「実験材料」であったイリナだったけれども、そんなことは関係なくなった、という形で終わるのだけど、最終巻もそんな印象。
結構、政治的な思惑とかについてはそのままに終わった感じはある。だからこそ、レフとイリナの今後にも色々と障害はあるだろう。でも、そういうものを乗り越える覚悟も、可能性もあるのだろう。そういう風に感じさせる余韻が残る。
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