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僕のアバターが斬殺ったのか

著者:松本英哉



現実の町を舞台にして、ゲームを楽しむことが出来るアプリ『ジウロパ』。高校生のアキラは、友人・ジュレの家で遠隔操作をしているとき、古ぼけたビルの一室で青年と口論になり、彼の喉元をバーチャル上の刀で斬りつけてしまう。ゲーム上での出来事。しかし、翌朝、そのビルで実際に青年の遺体が発見される。「犯人は自分なのか?」 アキラは高校生探偵の御影の協力を得て、真相を追うことにするのだが……
第8回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞・優秀賞受賞作。
これは、特殊設定ミステリ、なのかな?
物語のカギとなるのは、作中で主人公・アキラらがやっているゲーム『ジウロパ』。印象としては、VRゲームと『ポケモンGO』みたいなのを組み合わせたような感じ、ということになるのかな? 現実の世界、現実の道であったり、建物であったり、というところで、VRゴーグル(?)を起動すると、そこがゲーム空間になる。そして、その現実の世界に置かれた宝玉、神器を集める、というのが目的というゲーム。ただ、実際のその場に行かなくても、特殊な機器を使って遠隔でも出来る。ただ、その場合は得られるアイテムが限られたりしている……というような感じになる。
作中でも出てくるんだけど、VRに入らない『ポケモンGO』とかでも、周りを見ない人がいたりで危険視されたけど、これ、怖いよね……ってのが思ったことだったりはする。
で、その中で遠隔操作をしているときに切った相手が死亡。実際に触れているはずはないのに。しかも、現場は密室状態。本当に殺してしまったのか? さらに、その殺した(?)相手は、『ジウロパ』開発者・蜂須賀を死に追いやったとされる男。さらに、第2の事件まで起こり……
遠隔操作のはずなのに、密室殺人が発生。そして、『ジウロパ』プレイヤーの中で言われているアバターは、その人の魂で、だからこそそれが死んだら……というのが本当なのか? という疑念に取り憑かれていくアキラ。不可能状況での殺人で、「祟り」とかを絡ませる作品は多いけど、主人公がその思考に囚われていく……という展開の話は結構、斬新だと感じた。まぁ、アキラ自身も蜂須賀の死に対して罪悪感を抱いており、という過去の話などと絡めるとわからないでもないのだけど。そして、その密室の謎はしっかりと論理的に解かれていく、というのも本格モノとしての性格をしっかりと持っていると感じる。
もっとも……真犯人、その動機とかについては、ちょっと後出しっぽい感じはする。また、この『ジウロパ』というゲームがカギなのだけど、現実の建物とかにアイテムなどを配置して、というのは実際にやろうとしたら権利とかそういうのも含めて滅茶苦茶金が掛かるし大変なはず。蜂須賀が資産家だからできた、ということで作中の人々は納得しているのだけど、ちょっと無理がないか? という感じはする。そういうのも含めて、特殊設定ミステリって感じられたのかも。

No.6015

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Tag:小説感想福ミス松本英哉

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