著者:望月拓海

「熱くなりたいから」上京し、日本一稼ぐと言われる放送作家・韋駄源太の率いる作家集団「韋駄天」の新人採用試験に挑んだ元ヤンの大城了。彼は、そこで超あがり症ながら、企画立案の天才・乙木花史と出会う。見事に採用される二人であったが、しかしその世界は……
著者のデビュー3作とはガラッと作風を変えてきた本作。著者自身が、放送作家をやっていた、ということで、その経験を踏まえての物語、なのだろうな。
無事に採用されたは良いものの、「韋駄天」は完全な徒弟性……どころじゃないほどのブラックな体質。韋駄は、日本一の売れっ子というが、実は弟子のアイデアなども自分のものとして企画し、しかも、報酬なども大幅にピンハネ。しかも、放送作家という立場は、テレビ局の人間からすれば立場が弱く、頭を下げて仕事を貰うという存在。そんな世界に飛び込んで……
作家……というと、クリエイティヴなイメージだけど、放送作家というのはまた小説家とか脚本家とかとも違うんだろう、というのはわかる。小説家の場合は、一言一句、地の文からセリフまで自分で作るわけだし、ドラマや映画の脚本だって、役者はそれに従って演じることになる。では、バラエティとかの放送作家の場合は? 勿論、ある程度の台本はあるのだけどでも、全てをコントロールするわけではない。そんな違いとかが、まず「そうだよな」というのを思う。
その上での作家の意味。どういう番組を作りたいのか? そんな企画立案をする。しかし、それだけでは上手くいかない。出演者がどう、とかもあるし、予算の問題もある。自分でコントロールできるわけじゃない。けれども、理想はあるし、そこに向かっての努力も必要。そんな中で、共に放送作家の卵となった了と花史は奮闘することになる。この辺りは素直にお仕事ものとして楽しい。しかも、共に仕事をするものの、了は自分には花史ほどのアイデアとかはない……なんて葛藤も抱えるが、一方で花史は花史で……と言う部分もしっかりと抑えられているし、当初は嫌な奴、だった韋駄についても掘り下げられて……で、実に丁寧。嫌な部分もある。ブラックなところは沢山。でも、その中に……というバランスが見事だった。
まぁ、テレビ番組(に限らないけど)の企画などにおける作家性って色々と難しいよな、と思う。先に書いたように、自分でコントロールできる部分は限られているし、相手の要望に応えねば、という部分もある。その上で独自性を、と言われても……。そういうのも色々と考えさせられた。
本作はこれで終わりではなくて、間もなく続編が刊行されるわけだけど、主人公の一人である花史が抱えている闇みたいなものが、今後、どういう風になっていくのか、というのも注目したい。
No.6027

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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著者のデビュー3作とはガラッと作風を変えてきた本作。著者自身が、放送作家をやっていた、ということで、その経験を踏まえての物語、なのだろうな。
無事に採用されたは良いものの、「韋駄天」は完全な徒弟性……どころじゃないほどのブラックな体質。韋駄は、日本一の売れっ子というが、実は弟子のアイデアなども自分のものとして企画し、しかも、報酬なども大幅にピンハネ。しかも、放送作家という立場は、テレビ局の人間からすれば立場が弱く、頭を下げて仕事を貰うという存在。そんな世界に飛び込んで……
作家……というと、クリエイティヴなイメージだけど、放送作家というのはまた小説家とか脚本家とかとも違うんだろう、というのはわかる。小説家の場合は、一言一句、地の文からセリフまで自分で作るわけだし、ドラマや映画の脚本だって、役者はそれに従って演じることになる。では、バラエティとかの放送作家の場合は? 勿論、ある程度の台本はあるのだけどでも、全てをコントロールするわけではない。そんな違いとかが、まず「そうだよな」というのを思う。
その上での作家の意味。どういう番組を作りたいのか? そんな企画立案をする。しかし、それだけでは上手くいかない。出演者がどう、とかもあるし、予算の問題もある。自分でコントロールできるわけじゃない。けれども、理想はあるし、そこに向かっての努力も必要。そんな中で、共に放送作家の卵となった了と花史は奮闘することになる。この辺りは素直にお仕事ものとして楽しい。しかも、共に仕事をするものの、了は自分には花史ほどのアイデアとかはない……なんて葛藤も抱えるが、一方で花史は花史で……と言う部分もしっかりと抑えられているし、当初は嫌な奴、だった韋駄についても掘り下げられて……で、実に丁寧。嫌な部分もある。ブラックなところは沢山。でも、その中に……というバランスが見事だった。
まぁ、テレビ番組(に限らないけど)の企画などにおける作家性って色々と難しいよな、と思う。先に書いたように、自分でコントロールできる部分は限られているし、相手の要望に応えねば、という部分もある。その上で独自性を、と言われても……。そういうのも色々と考えさせられた。
本作はこれで終わりではなくて、間もなく続編が刊行されるわけだけど、主人公の一人である花史が抱えている闇みたいなものが、今後、どういう風になっていくのか、というのも注目したい。
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