著者:有川ひろ

「猫」を題材にした作品を集めた短編集。全7編を収録。
著者の作品で「猫」というと、『旅猫リポート』なのだけど、最初の2編は、その外伝エピソード。
2編目の『こぼれたび』は、外伝と言うか、未収録エピソードというべきか。ナナを引き取ってもらおうとサトルが訪れたのは、学生時代の恩師。しかし、ある出来事がきっかけで、サトルと恩師は疎遠になっていた……。作中の時系列では確かに、途中の話ではある。あるのだけど、やっぱり、本編を読んでいるかいないかで大きく印象が異なると思う。本編の真相がわかっているからこそわかるサトルの想い、後悔。そういう意味で、外伝、なのだろう。
そして、それ以外のエピソードについて……
ブログのプロフィール欄の写真とかでもわかるように、私自身が猫好き。それだけに、グサグサ刺さる。
5編目『シュレディンガーの猫』。出産のために帰郷していた香里が赤ちゃんと家に帰ると、そこには子猫が……。それなりに名のある漫画家であり、それ以外の生活能力が皆無な夫。しかし、ゴミ捨て場に捨て置かれた子猫をどうしても捨て置けなかったのだという。不器用ながらも、ネットで情報を集め、何とか世話をしようとしていた夫。自分の子供よりも猫のことを優先しているようにも見えるアレコレ。しかし、順番が逆ながらも猫のために、ということが子育てにも役立っている。これまで全く生活能力のなかった夫が……。夫の変化のきっかけにちょっと不満は覚えつつも、しかし、頼もしさも感じ始める香里の心境の微笑ましさ。そして、それがきっかけとなった結末が、素直に楽しかった。
6編目『粉飾決算』 家族の目から見ても「変人」である父。過去、飼っていた猫が死んだときも「そうか」だけで済ませた男。そんな父が、ある日、捨てられていた猫を見つけ、飼うことに……。特に世話をするわけではない父。愛想がなく、凶暴な猫。しかし、なぜか父に懐き、父もまたそんな猫にそれまでと違った表情を見せ……。
ハッキリ言って良い? これ、昨年(2020年)亡くなったうちの親父かと思った。いや、流石に作中の「父」ほどではないと思う。思うのだけど、気まぐれにエサをやったりするだけの存在。でも、我が家の中でのバカ猫(と呼ばれている)は、妙に懐いていた……。その光景をどうしても思い出した。
そして、7編目の表題作。
自分と同じ時期に生まれた浩美、その名づけ候補だった浩太という名を与えられた猫。老猫のダイアナに育てられ、同じころに生まれた浩美を「子供だな」と思っていた浩太。しかし、人間の時間と猫の時間は違う、ということ知り、それでも、浩美や家族と一緒に暮らしたくて……。
実家では歴代で結構な数の猫を飼っていたのだけど、猫の側の感覚だとこういうのもあるかも……。立場は逆かも知れないけど、自分が子供の頃、「お前の弟みたいだな」と言われていた子が年を取って……というときの事。また、現在、実家で飼っている最年長の猫は、自分が20代になってから飼い始めた子なのだけど、今やすっかりお婆ちゃん。猫の側がどこまで自分に想いを抱いているのかはわからない。でも、その立場を逆にして考えたら……。そういうことを色々と考えてしまった。
No.6030

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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「猫」を題材にした作品を集めた短編集。全7編を収録。
著者の作品で「猫」というと、『旅猫リポート』なのだけど、最初の2編は、その外伝エピソード。
2編目の『こぼれたび』は、外伝と言うか、未収録エピソードというべきか。ナナを引き取ってもらおうとサトルが訪れたのは、学生時代の恩師。しかし、ある出来事がきっかけで、サトルと恩師は疎遠になっていた……。作中の時系列では確かに、途中の話ではある。あるのだけど、やっぱり、本編を読んでいるかいないかで大きく印象が異なると思う。本編の真相がわかっているからこそわかるサトルの想い、後悔。そういう意味で、外伝、なのだろう。
そして、それ以外のエピソードについて……
ブログのプロフィール欄の写真とかでもわかるように、私自身が猫好き。それだけに、グサグサ刺さる。
5編目『シュレディンガーの猫』。出産のために帰郷していた香里が赤ちゃんと家に帰ると、そこには子猫が……。それなりに名のある漫画家であり、それ以外の生活能力が皆無な夫。しかし、ゴミ捨て場に捨て置かれた子猫をどうしても捨て置けなかったのだという。不器用ながらも、ネットで情報を集め、何とか世話をしようとしていた夫。自分の子供よりも猫のことを優先しているようにも見えるアレコレ。しかし、順番が逆ながらも猫のために、ということが子育てにも役立っている。これまで全く生活能力のなかった夫が……。夫の変化のきっかけにちょっと不満は覚えつつも、しかし、頼もしさも感じ始める香里の心境の微笑ましさ。そして、それがきっかけとなった結末が、素直に楽しかった。
6編目『粉飾決算』 家族の目から見ても「変人」である父。過去、飼っていた猫が死んだときも「そうか」だけで済ませた男。そんな父が、ある日、捨てられていた猫を見つけ、飼うことに……。特に世話をするわけではない父。愛想がなく、凶暴な猫。しかし、なぜか父に懐き、父もまたそんな猫にそれまでと違った表情を見せ……。
ハッキリ言って良い? これ、昨年(2020年)亡くなったうちの親父かと思った。いや、流石に作中の「父」ほどではないと思う。思うのだけど、気まぐれにエサをやったりするだけの存在。でも、我が家の中でのバカ猫(と呼ばれている)は、妙に懐いていた……。その光景をどうしても思い出した。
そして、7編目の表題作。
自分と同じ時期に生まれた浩美、その名づけ候補だった浩太という名を与えられた猫。老猫のダイアナに育てられ、同じころに生まれた浩美を「子供だな」と思っていた浩太。しかし、人間の時間と猫の時間は違う、ということ知り、それでも、浩美や家族と一緒に暮らしたくて……。
実家では歴代で結構な数の猫を飼っていたのだけど、猫の側の感覚だとこういうのもあるかも……。立場は逆かも知れないけど、自分が子供の頃、「お前の弟みたいだな」と言われていた子が年を取って……というときの事。また、現在、実家で飼っている最年長の猫は、自分が20代になってから飼い始めた子なのだけど、今やすっかりお婆ちゃん。猫の側がどこまで自分に想いを抱いているのかはわからない。でも、その立場を逆にして考えたら……。そういうことを色々と考えてしまった。
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