海鳥東月の『でたらめ』な事情
- 03, 2021 12:18
- や行、ら行、わ行の著者
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著者:両生類かえる

「私が盗まれたのは――鉛筆だ」 仲良しのクラスメイト・奈良芳乃から突如、相談を受けた海鳥東月。授業用に使う印をつけた鉛筆が盗まれ、全く同じ見た目の別のものにすり替えられているのだという。ストーカーの存在に気を付けねば……そう結論付けたやりとりは、その後の奇妙な事件へと結びついていって……
第17回MF文庫Jライトノベル大賞・最優秀賞受賞作。
最初にちょっとネタバレをしてしまうと、冒頭の、奈良芳乃の鉛筆を盗んでいた犯人は、主人公である海鳥。そして、その海鳥が変態的行動をしているとき、それを察知していた猫耳パーカーの『でたらめちゃん』が現れる。その、でたらめちゃん、は嘘が具現化した存在あり、「嘘をつくことが出来ない」海鳥に取引を持ち掛ける。そして、奈良にもある秘密があって……
序盤のインパクトがまず凄まじい。何しろ、ストーカーがいる、と相談を持ち掛けられた張本人が犯人で、というところから始まり、でたらめちゃんの乱入。さらに、仲良くしていた奈良もまた、大きな「嘘」を抱えていた。第1章の終わりで、驚かせ、第2章で再び驚かせ、さらに、第3章で……と、その都度、衝撃的な展開を持ってくることで驚かせる。その物語の運び方で惹きつけられた。
さらに、物語の軸である『嘘』。『嘘』とは一体何なのか? 『嘘』があることによって、人々の行動に「新たな可能性が生まれるんだ」とか、「嘘は生き物である」なんていうような話。ある意味では詭弁のような部分もあるのだけど、これ自体もなかなか興味深く読むことが出来る。その辺り、作品のテーマと言うか、味というか、そういうものになっているな、というのを感じた。
ただ……あまり、こういう比較は良くないのだけど……その『嘘』とは何なのか? みたいなやりとりとかは、レギュラー放送、スペシャル放送などを含めて何度もアニメ化された某有名作品のそれをどうしても思い浮かべてしまう。また、後半に入って、そんなでたらめちゃんを追う組織の者がやってきて対決へ……となるのだけど、この辺りが「異能バトル」+「頭脳戦」みたいな感じになってちょっと序盤のカラーが薄れたように思う。そもそも、「嘘をつけない海鳥」「嘘しかつけないでたらめちゃん」みたいな部分の、嘘をつく、つけない、の境界線も曖昧だし……。
物語を引っ張る力は凄いのだけど、一歩引いて考えたときに、「ん?」と感じる部分がないでもなかったかな?
No.6051

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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「私が盗まれたのは――鉛筆だ」 仲良しのクラスメイト・奈良芳乃から突如、相談を受けた海鳥東月。授業用に使う印をつけた鉛筆が盗まれ、全く同じ見た目の別のものにすり替えられているのだという。ストーカーの存在に気を付けねば……そう結論付けたやりとりは、その後の奇妙な事件へと結びついていって……
第17回MF文庫Jライトノベル大賞・最優秀賞受賞作。
最初にちょっとネタバレをしてしまうと、冒頭の、奈良芳乃の鉛筆を盗んでいた犯人は、主人公である海鳥。そして、その海鳥が変態的行動をしているとき、それを察知していた猫耳パーカーの『でたらめちゃん』が現れる。その、でたらめちゃん、は嘘が具現化した存在あり、「嘘をつくことが出来ない」海鳥に取引を持ち掛ける。そして、奈良にもある秘密があって……
序盤のインパクトがまず凄まじい。何しろ、ストーカーがいる、と相談を持ち掛けられた張本人が犯人で、というところから始まり、でたらめちゃんの乱入。さらに、仲良くしていた奈良もまた、大きな「嘘」を抱えていた。第1章の終わりで、驚かせ、第2章で再び驚かせ、さらに、第3章で……と、その都度、衝撃的な展開を持ってくることで驚かせる。その物語の運び方で惹きつけられた。
さらに、物語の軸である『嘘』。『嘘』とは一体何なのか? 『嘘』があることによって、人々の行動に「新たな可能性が生まれるんだ」とか、「嘘は生き物である」なんていうような話。ある意味では詭弁のような部分もあるのだけど、これ自体もなかなか興味深く読むことが出来る。その辺り、作品のテーマと言うか、味というか、そういうものになっているな、というのを感じた。
ただ……あまり、こういう比較は良くないのだけど……その『嘘』とは何なのか? みたいなやりとりとかは、レギュラー放送、スペシャル放送などを含めて何度もアニメ化された某有名作品のそれをどうしても思い浮かべてしまう。また、後半に入って、そんなでたらめちゃんを追う組織の者がやってきて対決へ……となるのだけど、この辺りが「異能バトル」+「頭脳戦」みたいな感じになってちょっと序盤のカラーが薄れたように思う。そもそも、「嘘をつけない海鳥」「嘘しかつけないでたらめちゃん」みたいな部分の、嘘をつく、つけない、の境界線も曖昧だし……。
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