著者:早見慎司

地球に雨が降らなくなり、世界は滅びした。だが、干上がり、荒野となった大地にへばりついても、ヒトは生きている。そして、ヒトでないものもの。荒野にサイドカーで現れるオールドファッションなコーヒー屋台と、それを引っ張り旅をする吸血鬼のセレン……
うん、こういう世界観好き。
文明が滅びた世界で、コーヒー屋台をしながら旅をするセレンがその旅先で出会う出来事を描く連作短編集。
導入篇と言える1編目『喧噪/賢奏』。荒野で屋台を開いていたセレンの元へやってきたのは、大音量でメタル音楽を流しながらトラックを流す青年・セルゲイ。その大音量にはうんざりするものの気の良いセルゲイ。コーヒー代として彼が置いていったのは……。セレンが何者なのか? そして、どういう性格なのか? そういうのがよくわかる。
2編目『約束/厄則』。この時代にあって水の豊かな街へやってきたセレン。水を貰う代わりに水主から依頼されたのは、水を奪おうとする近くの牧場主から街を守ってほしい、というもの。しかし……。水がない、という世界において、ある意味で権力の源泉と言える「水」を持つ存在。水を奪おう、というのもさることながら、一見、慈悲深いと思われても……。真相もさることながら、それがなかったとしても、この世界観がどういうものなのか、というのを考えると「なるほど」と思わされる部分の多いエピソードだった。
セレンが吸血鬼、ということがよくわかるのは4編目『海/膿』。海辺で夫婦と出会ったセレン。夫婦は、自分の娘が体調を崩したことに慌てていた。セレンの見立てでは、破傷風。早く処置をしなければ、命に係わる。あまりにも無思慮で、気弱な夫婦に数日待て、と言ってセレンは医者のいる街へ向かうが……。あまりにも、ひ弱すぎる両親。しかし、そんな両親を追い詰めた存在。そんな相手に対してのセレンの怒り。それまででも、セレンが規格外の強さを持っている、というのは示されていたのだけど、吸血鬼としての特色なども出ての結末が強く印象に残った。
旅、を題材にした作品の場合、結構、何でもあり、っていう作品もあるのだけど、ある程度、世界観が固まった上での、っていう部分が自分の好みに合致していた。
No.6054

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
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文明が滅びた世界で、コーヒー屋台をしながら旅をするセレンがその旅先で出会う出来事を描く連作短編集。
導入篇と言える1編目『喧噪/賢奏』。荒野で屋台を開いていたセレンの元へやってきたのは、大音量でメタル音楽を流しながらトラックを流す青年・セルゲイ。その大音量にはうんざりするものの気の良いセルゲイ。コーヒー代として彼が置いていったのは……。セレンが何者なのか? そして、どういう性格なのか? そういうのがよくわかる。
2編目『約束/厄則』。この時代にあって水の豊かな街へやってきたセレン。水を貰う代わりに水主から依頼されたのは、水を奪おうとする近くの牧場主から街を守ってほしい、というもの。しかし……。水がない、という世界において、ある意味で権力の源泉と言える「水」を持つ存在。水を奪おう、というのもさることながら、一見、慈悲深いと思われても……。真相もさることながら、それがなかったとしても、この世界観がどういうものなのか、というのを考えると「なるほど」と思わされる部分の多いエピソードだった。
セレンが吸血鬼、ということがよくわかるのは4編目『海/膿』。海辺で夫婦と出会ったセレン。夫婦は、自分の娘が体調を崩したことに慌てていた。セレンの見立てでは、破傷風。早く処置をしなければ、命に係わる。あまりにも無思慮で、気弱な夫婦に数日待て、と言ってセレンは医者のいる街へ向かうが……。あまりにも、ひ弱すぎる両親。しかし、そんな両親を追い詰めた存在。そんな相手に対してのセレンの怒り。それまででも、セレンが規格外の強さを持っている、というのは示されていたのだけど、吸血鬼としての特色なども出ての結末が強く印象に残った。
旅、を題材にした作品の場合、結構、何でもあり、っていう作品もあるのだけど、ある程度、世界観が固まった上での、っていう部分が自分の好みに合致していた。
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