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ルパンの絆

著者:横関大



警視庁捜査一課の刑事・桜庭和馬はホテルのバーで張り込み中、突如、意識を失ってしまう。気づいたとき、彼がいたのはホテルのスイートルーム。そこには全裸の女性の遺体が……。和馬は自らの潔白を証明するため、警察から逃亡しながら事件を追う。一方そのころ、和馬の妻・華のもとには「娘を返してほしくば、10億円を用意しろ」という脅迫電話が入り……
これでシリーズ完結……なのかな? シリーズ第5作で、ここ数作は文庫書下ろしだったのが、本作は単行本での刊行。
冒頭に書いたように物語は、殺人の濡れ衣を着せられ、警察に追われることとなった和馬と、娘を誘拐されたという華。二つの事件が同時進行する形で綴られる。過去の物語のような日常描写というのはほとんどない形で展開していく。
スイートルームで女の死体と共に目を覚ました和馬。しかも、何者かが警察に通報しており、自分がはめられたのは確実。犯人にされてしまうならば、と逃亡。勿論、スマホの位置情報などから場所を特定されるわけにはいかないので、電源を切って……。そのため、娘が誘拐された、という事実には気づかない。そして、関係者を追う中でさらなる他殺体、さらに、警察の中での不正も見え隠れしてくる。
一方の華。娘を誘拐された。それだけでも一大事。しかし、警察官とパートという夫婦に対して10億円というのは異常な金額。ということは、犯人は華の一族の素性を知る者? 夫に連絡がつかない中、兄の渉、その恋人で和馬の部下でもあった北条美雲と共に事件を追うことになり……
探偵一家の娘・北条美雲。『ホームズの娘』で出たときは新キャラって……と思ったのだけど、渉ともども、今回は大活躍。凄腕のハッカーである渉と、美雲の推理力などで二つの事件の橋渡しをし、どちらでも事件をコントロール。そして、その二つの結びつきに……。そう考えると、美雲がいることで、今回の物語が成立している、というのがよくわかる。そして、当然、その事件の背景にいたのは……
これまででも姿を現していた黒幕的な存在が、犯罪組織も率いていて……とか、そういう部分については荒唐無稽ではある(それを言うと、泥棒一家だの、探偵一家だのもそうではあるが)が、それまでのシリーズですんなりと理解が出来るし、その黒幕との対決にもしっかりと決着をつける。その上で、和馬と華の絆という終わり方。綺麗に着地していると思う。
正直なところ、このシリーズ。第1作『ルパンの娘』のときには、イマイチ入り込めなかった部分があったのだけど、第2作、第3作と読む中でキャラクターにも愛着が沸き、すんなりと楽しめるようになっていった。そして、その集大成という意味で文句のない決着をしたと思う。
でも、これで終わりとしたらちょっと寂しいかな? というのもある。

No.6060

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Tag:小説感想横関大

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