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朝と夕の犯罪

著者:降田天



大学生であるアサヒは、別々の人生を歩んでいた弟ユウヒと10年ぶりに再会する。久々の再会を懐かしむアサヒだったが、かつての出来事を理由に狂言誘拐に加わるよう強要されてしまう。それから8年後、神倉市のマンスリーアパートで衰弱した男児と餓死した妹の遺体が発見される。神奈川県警捜査一課の刑事・烏丸靖子は兄妹を置き去りにした母親の取り調べを始めるが、かつて誘拐事件に巻き込まれていたことが判明して……
『偽りの春』の狩野雷太のシリーズ第2作。
とはいっても、前作同様、狩野雷太は物語の最後に出てくるのみ、である上に物語上の繋がりはないので単独で読んでも問題はないと思う。
冒頭の粗筋では、同時進行で物語が描かれるように書いたけれども、物語は2部構成。第1部が、2011年の物語で、大学生であるアサヒが弟のユウヒと再会し、狂言誘拐に加わるように強要される物語。第2部が、アパートで母親に置き去りにされた子供が発見されて、というところからの物語。
アサヒとユウヒは幼いころ、父と車で日本中を旅して、盗みなどをしながら暮らしていた。ハッキリ言って滅茶苦茶な生活。しかし、なぜか礼儀作法などには厳しい父。そんな日々に嫌気がさしていた二人は、車に細工をし、父は死んだ。そして、アサヒは母の元へ、ユウヒは児童養護施設へ引き取られ……。そんな過去の事件をネタに狂言誘拐に誘われたアサヒ。相手は、横浜市長選に出馬する松葉修の娘・美織。アサヒは、選挙事務所に様子を探るために送り込まれるのだが、しかし、紆余曲折の末……。それでも成功したと思われるが、思わぬ形で事件は収束する。
世間体を何よりも重んじる松葉家。その中で、家族の中でいなかった者として扱われた美織。そんな意趣返しを考えたはずの事件だった。そして、8年後の事件。現在は人気コメンテーターとなった松葉修。その娘が起こした事件。狂言誘拐は表ざたにされておらず、警察はアサヒ、ユウヒの兄弟と見るが、弟は行方不明。さらに、8年前、父の後継者と目されていた息子は引きこもりになっていた……
物語のテーマは、家庭、家族というものなのかな? ユウヒとアサヒの兄弟。学校にも行かせず、犯罪で生計を立てていた父子。しかし、確かに、3人は家族であった。勿論、再会をしたときのイザコザなどもあった。しかし……。一方で、世間体も良く、エリートと言われていた松葉家では……。幼少期の兄弟のエピソードの回収とか、その辺りもしっかりとはしている。ただ、それよりも家族内でのアレコレが印象に残った。
現在の美織について、もうちょっと掘り下げなどが欲しかったかな、と思うところがないわけではないのだけれども。

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Tag:小説感想降田天

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