君の足のためなら死ねる

著者：刈野ミカタ



「天使の翼」　元天才サッカー少年の御名神行真は、公園でリフティングをしていた少女・宇多結……の足に出会う。サッカー界に降臨すべき理想の足を持った結の足を触り歓喜した行真は、極度のコミュ障の彼女の足をＷ杯に立たせるため、拝金主義者で御名神グループの総帥である母の協力を求める。結果、行真は、結を含めたフットサルチームのコーチをすることになって……
なかなかに酷いタイトルだ！
いや、主人公である行真もなかなかにアレなのだけど……
こういう風に書くと、誤解されそうなのだけど、物語の基本は結構、真面目なスポ根モノ。天才サッカー選手と言われ海外にも渡っていたものの怪我により、その道を絶たれた行真。そんな彼の前に現れた結は、サッカー選手にとっての理想の足とでも言えるものを持っていた。コミュ障で、他人と会話などが出来ない、という結だが、サッカーが大好きでサッカーをしたい、という彼女をサポートしたい。そうして結を含めて集められた５人の少女たち。それぞれ、良い「足」を持っている。しかし、それぞれに問題を抱えた存在ばかりのフットサルチーム。そんな少女たちのコーチとなって……
という風に粗筋を書けば、まともなスポ根モノでしょ？　そして、実際、素質はあるはずなのだけど、チームとしての連携だとか、はたまた、人間としての欠点だとか、そういうものがあり、その素質を活かせない。そんな少女たちに、コーチとして真正面から向かい、一つ一つ問題を対処していく流れは王道そのもの。終盤、チーム解散の危機が訪れたときも、行真の情熱、そして、問題を解決してきたことで培われた結束力。そういうものが詰め込まれた部分は素直に熱い。そういう意味で、スポ根モノとして十分に面白い。
面白いのだけど……
それ以上に目立つのが行真のナチュラルな変態行動なんだよな……
シンプルに言えばサッカー馬鹿な行真。しかも、怪我で挫折を味わっている。だからこそ、筋肉の付き方とか、そういうものを徹底的に見て、そこに拘る。それは良いのだけど、徹底しすぎていて、最早、変態と言えるべき領域へと達する。美しい足があれば飛びつくし……。フェチ、というわけではないはずなのに、フェチそのものになっている姿に笑わせてもらった。
エッセンスを取りだせば、熱いスポ根モノのはずなのに、変態小説。お見事！

Ｎｏ．６０６９


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