fc2ブログ

虚構推理 逆襲と敗北の日

著者:城平京



「それは巨大で、凶暴で、獰猛で、何よりも場違いな亡霊だった」 山中で起きた男女の転落事件。琴子と九郎は、なぜか警察から呼び出される。なぜなら、そのグループに因縁深い桜川六花が居合わせ、容疑者となっているため。その事件は、異郷の地からやってきて、怨念を抱えたままのキリンの亡霊が関わっていて……
一応、この巻は長編といって良いのかな? 第1章は、独立した短編みたいな形になっているけど……
その第1章は、琴子の元に殺人現場を見た、という妖怪の相談が入る。人目につかない駐車場で派手な服を着た男が、相手を刺殺。それを見て妖怪は逃げてしまったが、被害者はなぜか別の場所で発見された。被害者は数々のトラブルを起こしている人物で恨みを多く買っている。だからこそ、とは思うが、しかし、激情にかられて、というには計画的。が、計画をしていたというのならば、今度はなぜ派手な服装なのかわからない。どうにもチグハグな事件。その真相は……
琴子と六花がコンビを組んで、という部分の新鮮さはあるのだけど、それ以上に印象的なのは犯人の考え方。でも、ただの偶然とか、そういうものを……ということはあるんだろうな。実際、そういうものに意味を見出して、っていうのは占いとかそういうものの発端みたいなものだし。
そして、粗筋でも書いた事件。
事件の背景に、キリンの亡霊というのが関わっている、というのは最初から分かっている。六花の他、現場に居合わせたのは学生時代の友人という4人の男。彼らは、亡霊に襲われ、4人中3人が死亡し、1人は重傷の状態で助かった。事件、事故、双方の視点で警察は捜査をするが、その中でどう対処すべきか琴子らは悩む。
『鋼人七瀬』でもあったように、妖怪とか亡霊というのは、人々がその存在を認識、話題にすればするほど力を強くする。幸いにして、今回の事件で、キリンの仕業と知っているのは生き残った一人のみ。だが、その一人が退院したのち、ネットなどで話題にすれば……。さらに、そのグループの面々は、かつてサークル仲間であった一人の女性の死を巡って思うところがあって……。
事件の真相を探る……というのではなくて、真相は最初から分かっている。わかっているからこそ、どう真相を外して収めるのか。ただ、部外者である生き残りは警察の手の中にあり、コントロールできない。警察を納得させ、さらに……という綱渡りの攻防をしなければならない。しかも、物語の発端と言える六花も何かを企んでいる。琴子と六花のさや当て合戦もある。このシリーズの真相を求める、というよりも以下に納得させ、妖怪などの存在を否定する、という物語を久々に堪能できた。
と、同時に終章での話。琴子は、人間、妖怪と言った存在の秩序をつかさどる存在。そのことを考えたとき、九郎と六花の存在は……
シリーズ全体を考えたときの伏線となりそうなものも気になるところ。

No.6074

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想講談社タイガ城平京

COMMENT 0