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ゴールデンコンビ 婚活刑事&シンママ警察翻訳人

著者:加藤実秋



神奈川県蜂須賀市の駅前繁華街の外れにて、バラバラにされた外国人女性の遺体が発見された。被害女性は中南米系……、恐らくはブラジル人と思われることから、所轄の刑事・白木は、警察通訳人の幾田アサとコンビを組んで聞き込みに捜査に当たることになって……
形の上で、短編が1編あって、そのあとに長編が、というような形だけど、話そのものはつながっているし、むしろ短い第1章のあとに、長い第2章、というようなイメージで考えたほうが良いのかな?
物語は、というと、粗筋として書いたように、繁華街で発見されたバラバラ遺体。その捜査をするために白木とアサが出会い、ぶつかるところもありつつも聞き込みをすることに。ただ、この事件そのものはまもなく解決を迎える。ただ一つ、そのバラバラ遺体を集めても、欠損している部分が残る、という点を除いて……
それから1か月。再び今度はバラバラ遺体が発見される。場所は造船所内の港。そこにやはり、バラバラの遺体が。被害者は造船所で働くブラジル人女性。ただし、彼女はブラジル人の中でも少数民族に属する民族で、造船所内でも特殊な立ち位置のグループに属していた。そして、1か月前の事件の被害者も同じ民族出身だった……
その事件を二人が捜査する形なのだけど、まず言えるのは二人の設定がちょっと特殊のが特徴かな?
主人公の白木は、結婚願望が強いのだが、ふとしたところで空気の読めない一言を発してしまう悪癖がある。そのため、結婚相談所から紹介された相手にも次々と振られてしまう、という立場。ただ、この事件の中で紹介された女性とは上手くいきそうな雰囲気もある。実際の警察官も、仕事は仕事、プライベートはプライベートなのだろうけど、捜査の合間を縫ってデートとか、なかなかすごいことをやってくれる。
一方のアサは、日本人ではあるが幼いころから海外で過ごし、ブラジルで大学、大学院まで修了。日本に慣れていないため、日本の文化などにはやや疎く、白木の物言いなどに対して正面から反発したりもする。ついでに、ことわざなどにも弱く、ことわざの誤用を連発したりもする。
そうして、事件、白木の婚活が同時進行で、白木、アサの対立を軸に物語が進行していく。
その対立軸というのが、二人が捜査の最中に出会う一人の青年について。被害者と同じ民族の血を引きながら、しかし、混血であるとしてコミュニティに入れてもらえない存在。性格は明るく朗らかで、捜査にも協力的。そんな青年をアサは個人的に気に入ってしまう。けれども、捜査をする側である白木たちは、彼もまた容疑者の一人であり……
一度目の聴取などで、問題が晴れた、と思いきや、二度目、三度目と聴取に行くことになる白木たち。青年は、それにも応じるが、青年以上にアサが反発。なんで、そんなに疑うのか? よく刑事ドラマとかでも、「またですか? 何度も聞かれましたよ」みたいな目撃者とかの台詞があるけど、そういう状況に(一応)捜査側の人間が反発する構図っていうのはなかなか面白かった。そして、だんだんと対立はするのだけど、その中で白木がアサに伝えた「個人的な思い入れをしたならば……」という言葉も。
……まぁ、警察通訳人はあくまでも民間人だから、そういうのも全くないわけではないのだろう。でもその一方で、契約とかである程度、役割とかを知らされているはずだから、アサのように表立って反発することもできないと思う。このあたりのラインを描けるのは、リアリティ趣向というよりも、キャラクター面を表にした警察モノらしいところじゃないかと思う。これはこれでアリでしょう。
正直なところ、アサがシングルマザーである、という部分はあまり活かされていない気がするところはある。これなら、日本文化に疎い帰国子女ってだけでもよさそうな感じがするし。設定として、シングルマザーとするなら、そこはもうちょっと掘り下げてもよかったかも。

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Tag:小説感想加藤実秋

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