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巫女島の殺人 呪殺島秘録

著者:萩原麻里



瀬戸内海に浮かぶ千駒島。この島では、巫女が死者の魂を呼ぶ、という秘儀が今なお行われている。そんな島から与志月研究室に届いたのは、この島では過去の事件を隠蔽し、次の祭りにて新たなる死がもたらされるだろう、という手紙だった。本来、外の人間が島へ立ち入ることのできない大晦日の祀り。調査のため、特別に許可された真白ら、与志月研究室の面々だったが……
シリーズ第2作。
前作『呪殺島の殺人』も、いかにも、なクローズドサークルの状況が作られ、しかし、いざ物語が始まってみると王道のクローズドサークルものとは異なった方向へ……という感じな話だったのだけど、本作も同様。
島の人間にだけ伝わる祀りがある。しかし、その祀りには因縁があるらしい。そんな中、祀りの中心となる巫女。その巫女の同級生、幼馴染の若者たちが次々と遺体となって発見される……。ここだけ切り取れば、「いかにも」って感じでしょ? ところが、その幼馴染をはじめとして、関係者の面々のアリバイというのは基本的にない状態で、誰が犯人か、というのを考察しようにも決め手がない状況。そういう状況で、誰が事件の犯人なのか、ではなくて、その「祀り」とはどういうものなのか? を探ることに焦点が当てられている。
実際問題として、それだけで十分に読ませるものはある。
先に書いたように、祀りの中心となるのは、千駒美寿々という巫女。そして、その巫女は18歳になると神通力を身に着け、「本当の」巫女になるという。今年の祀りは、まさに、その美寿々が18歳となってのもの。そんな島で、祀りを取り仕切る世話役たちと、美寿々の幼馴染に当たる同級生。高校3年生である彼らは、閉鎖的な島での役割と自分の進路への悩みなども抱えているが、もう一つ、何か隠している様子が見受けられる。そして、その死の中で……
島にとって、何よりも大切な祀り。
経済とか、そういうものを含めて、島とか村においてそういうイベントが大事である、という考え自体は理解ができる。しかし、実際に自分の子供が死んでいる、という状況にあっても、ほとんど無頓着に祀りを進めようとする島民たちというのは、明らかに異常。なぜ、そんな態度が取れるのか? 勿論、そこにはちゃんと理由もあって……
確かに、物語の冒頭に研究室へ届けられた手紙に書かれた言葉の意味。なぜか近年は、移住者が多くいるという理由。18歳を迎えた巫女が8年ぶりに生まれる、ということの持つ、極めて大きな意味。特に、物語のきっかけともいえる手紙の言葉の意味が、文字通りにひっくり返る真相には驚かされた。
いや、考えてみれば、ここまでというのは異様だし、そこまで信じている人もいないとはいえる。でも、身近にある思想の中にも、これに近いもの、っていうのはあるんだよな。例えば、12月の後半に大々的なお祭りがある宗教とか、そういうのも近い部分はあるんだよね。それをさらに先鋭化させたら……。勿論、これは架空の物語であるのだけど、外部の人間、思想が入りづらい孤島という環境とか、そういう舞台設定はリアリティをもたらすうまい小道具として活きているのだな、というのを感じる。
前作同様、今作でも物語の終盤は、今後もいろいろとありそうだ、というのを示唆する形で終わっている。
設定とかを考えるのは大変だと思うのだけど(ちなみに、前作を読んだのは、2020年7月なので、1年半ぶりくらいの続編)、続くのであれば、また読んでみたい。

No.6090

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Tag:小説感想 新潮文庫nex 萩原麻里

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