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AIアテナの犯罪捜査 警察庁情報通信企画課<アテナプロジェクト>

著者:越尾圭



新宿中央公園で突如、ドローンが爆発。少年時代に殺人を犯した男が死亡する。現場から発見された金属製のカプセルからは、警察庁が開発を進める犯罪捜査AIに対する挑戦状が入っていた。たまたま現場に居合わせた警視庁捜査一課の刑事・十勝は、その捜査AI・アテナの開発を進めるリーダー・穂積から相棒に指名される。アテナを駆使する捜査を進める二人。だが、次なる事件が……。さらに、十勝の元には、犯人から母親を人質に、情報をよこせと言う犯人からのメッセージが……
犯罪捜査を専門とするAI。どうしても某シリーズを思い浮かべてしまうけど、勿論、別物だけど。
物語としては、次々と起こる殺人。被害者として選ばれているのは、過去に殺人などを行いながらも、少年法や刑法39条などによって、不当に罪が軽くなった、とされている人物。そして、十勝とタッグを組むことになった穂積もまた、両親を事件によって喪い……という過去を持っていた。AIによる絞り込みで、そのような過去を持っている人物。また、防犯カメラなどの情報。そういうものを駆使した絞り込み。さらに、十勝の元へ届く脅迫。母親を実質的に人質に取られる形となり、母を避難させるものの、なぜか情報は筒抜け。どこから情報が洩れているのか?
AIを捜査に用いる、ということで、AI開発におけるフレーム問題などと言ったものを分かりやすく解説している。しかし、次々と起こる事件を始めとしてサスペンスフルな物語がメインとなっているため、いかにも説明説明した部分というのがなく、どんどん読み進めることが出来た。この辺りの話の作り方は素直にうまいな、と感じる。そして、その物語の結末。3分の2くらいのところで、一旦は犯人が判明したと思ってのひっくり返しなど、かなり練り上げられている。
この物語。AI開発がテーマではあるのだけど、読み終わってみると犯罪被害者が、その過去にどう立ち向かうのか? という部分なのかな、とも思う。自身がそういう事件に関わった過去を持つ穂積と黒幕。どちらも、関係者ではあるが、しかし、その立ち向かい方は対照的。その点がより、印象に残った。
ただ、分量的なこともあるんだろうけど、もうちょっと犯人側の掘り下げがあっても良かったかな? と思う。一応、説明はされているけど、その中での心情とかが描写されていれば、もっとそのテーマが鮮やかになったように感じるだけに。

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Tag:小説感想越尾圭

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