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怖ガラセ屋サン

著者:澤村伊智



「怖ガラセ屋」という存在を中心に据えた(?)連作短編集。全7編を収録。
まず最初に書くと連作短編という風に紹介はされているけど、そう感じられるのは後半になってから序盤のエピソードは独立した話っぽいかな? と思う。最後につなげる形なのだけど、どちらかと言うと独立したエピソード集のような印象が強いかも。
1編目『人間が一番怖い人も』。後輩とその婚約者を家に招待した俺。後輩の婚約者は怖い話が好きなのだという。霊などくだらない。人間が一番怖い、と伝えた俺だったが……
「人間が一番怖い」 犯罪とか、そういう話においてよく言われる話ではある。では、そういう人は本当に人間が一番怖いと思っているのか? 警戒をしているのか? ある意味で主人公の見下した態度と、そこから豹変する後輩たちの言動。「人間が一番怖い」というある種の一般論に対して、そこを突き詰めていく流れ、というのが実に痛快だった。結末はかなりグロ方面に行くけど。
5編目『恐怖とは』。家庭もしっかりと守っている、という俳優が実は女性を連れこむための部屋を借りており、そこで……という情報を得た雑誌記者。アパートの近くで張り込みをしていると情報を提供してくれた女が現れた。ともに車のなかで張り込みをする中、彼女から「怖いもの」について尋ねられ……。これは一体、何だったのだろう? という感じはする。何が怖いか、というような話をする中で、語り部である主人公が実は……というのを繰り返す。その本当に真相について、「こうだったんだ」ということはわかる。わかるのだけど、結局、何だったの? という感じが残った。
6編目『見知らぬ人の』。くも膜下出血を発症し、入院中の私。後遺症が残り、その前後の記憶なども大分失われた私の元に、妻の美和は甲斐甲斐しく見まいに訪れる。そして、同室の徳永さんの元にも毎日、同じ時間に若い女性が見舞いに訪れている。奥さん、というには若すぎるし、娘や孫だという感じでもない。どういう関係なのか? 妻が徳永さんに尋ねてみると……
これも終わり方としては、何だったのだろう? と思うところはある。けれども、妻から言われた徳永さんの言葉。「あの女性は自分の知らない人」「見まいに訪れては、訳の分からないことをひたすら言い続けている」 解放されている病院という施設では全くあり得ない、とは言えない話。そして、実は、なひっくり返し。悪意たっぷりな結末とそれ故の怖さ、というのが光っている。
途中から同じようなオチの話が多くなった気はするんだけど、それでも気持ち悪さ、怖さというのが凝縮された作品集だったのは確か。

No.6103

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Tag:小説感想澤村伊智

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