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兇人邸の殺人

著者:今村昌弘



「魔眼の匣」での事件から数か月。剣崎比留子から呼び出しを受けた羽村譲は、生ける廃墟として注目を集めるテーマパークの中にある「兇人邸」に班目機関の研究成果が隠されている、ということを伝えられる。その研究を手にしたいという成島、彼に雇われた傭兵たちと共に忍び込むことにした譲たち。だが、そこで待ち受けていたのは……
シリーズ第3作。
話の設定は1作目の『屍人荘』に似ているかな? 圧倒的な身体能力を持つ、隻腕の巨人。驚異的な身体能力のみならず、回復力を持ち、銃撃をしたところで簡単に回復してしまう。屋敷に潜入した譲たちは、いきなりそんな存在に襲われ、仲間たちの数名は殺されてしまう。何とか、その巨人から逃れることは出来たが、巨人の潜入を防ぐための装置により、譲たちは比留子と分断されてしまう。そんな中で、巨人を飼っていた館の主・不木が死体で発見される。この辺り、ゾンビの群れ、というやはり化け物の脅威にされされた場所で殺人が、という第1作目と似た印象が残る。
巨人は、日光に弱く昼間は活動をすることが出来ない。巨人は殺した相手の首を切り取る(千切る?)という性質を持っている。そんなルールから考えていき、当初は巨人に殺されたと思われた主を殺した者がいて……。そんなところから、生き残りの中に殺人者がいる。それは一体誰なのか? というところを探る、というような話になっていく。
今回の話の場合、何よりも印象的なのは、「謎を解く」ということの意味を考える部分かな?
会話はできるけれども、別々の場所になってしまった比留子。生き残りの中に殺人者がいる、ということでその調査をしようと考える譲に、推理などすべきでない、と迫る。なぜならば、閉鎖された空間。ただでさえ疑心暗鬼が募る中、謎を解いたところで状況が改善されるわけではない。むしろ、譲を命の危険にさらしてしまう。それならば……。たしかに、クローズドサークルで殺人が起きて犯人を特定すれば、という環境ならばともかく、巨人と言う脅威がいる状況では問題が解決するわけではないし……。この辺り、探偵とは? という問いになっていると思う。
まぁ、そういいながら密かに譲を守るために殺人犯を特定して(ただし、全ての謎が解けたわけではない)、その犯人と取引をするとか、ツンデレキャラっぽい部分もあるんだけど。
ただ謎解きそのものよりも、班目機関の研究とかそれを巡るアレコレっていう側面がだんだんと強く出てきている、という感はあるかな?

No.6106

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Tag:小説感想今村昌弘

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