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ビザール学園

著者:前川裕



予備校の講師から、新鋭の進学校・綾西学園の教師に転身した三隅。校長の誘いの言葉に心動かされた三隅だったが、赴任して知ったのは旧弊な制度が生き残るという学園の実態。校長ら管理職による締め付け。その権威を笠に着た体罰肯定派教師の横暴。さらに、生徒の間では、かつてその土地で起きた幼児殺害事件の呪いという噂が広まっていた。そんな中、女子生徒が不可解な他殺体で発見されて……
まぁ、言っていることは立派だけど……っていうのはよくある話。うちの母校の高校も、文武両道とか言っているけど、生徒からは文武共倒れ、とか揶揄されていたし、一部の部活の部員と教員は無駄に威張り腐っていて鬱陶しかった。そういうのってどこにでもあるんだろう。そんな中で、失望を隠しきれない三隅の心情はよくわかるし、その中で起こる事件が……という形で展開していく。
ともかく、謳い文句とは別に、旧弊なしきたりやら考え方が蔓延している学園。体育教師は、障害を持った少女にも水泳の授業を強要しようとし、その結果、少女は不可解な死を遂げる。さらに、そんな少女に想いを寄せていた男子も自殺してしまう。そんな少女への強要に反対していた教師は、左翼政党の支持者だと学内では冷遇されており……。そんな中で、さらに教員が殺されたり……という事件が次々と。
著者の作品って、主人公自体が変な性癖を持っていたりすることが多いのだけど、本作の主人公・三隅はそういうことがなくて読みやすかった。むしろ、冷静過ぎて機械みたいに感じるところすらあるのだけど、これだけ無茶苦茶な学校内の状況だと、そういうキャラクターにしないと描きづらいのかな、という気はする。
うーん……感想はちょっと書きづらいな……
今作、物語として社会問題とか、そういうものを題材にしているのではなくて、純粋に常にごたごたとした学校内の人間関係というのを中心に描いている作品だと思う。これは、こうだよな、と言うような共感とかとは違うものだから。ただ、物語として読んでいる最中は、テンポよく、次々と事件が起こっていって思わぬ形でその人間関係の裏があって……と展開していくため惹きつけられた。純粋にそういう作品を目指した結果、なのだと思う。
読み終わって、こうだったよな、というよりも、次に何が起きるのか、というようなところで楽しんだ作品、という感じかな?

No.6109

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Tag:小説感想前川裕

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