著者:福田悠

東京東部郵便局。多くの手紙、荷物が集まるそこでは、日々、不可解な事件が……。局員たちが頭を悩ませるとき、社員食堂のおじさんが……
という連作短編集。全4編を収録。
物語の構成としては、郵便局の様々な部署で働く各編の主人公たちが不可解な出来事に頭を悩ませる。そんなとき、社員食堂を切り盛りするおじさん、上條が一言を発し、それで謎が解明される、という形の物語になっている。ただ、こういう形の作品だと、「日常の謎」っぽい感じなのだけど、4編中3編は犯罪行為が関わっていたりする。
郵便。民営化でどうのこうの、とは言われるものの、利用したことがない、という人はまずいないと思う。そして、その中で、融通が利かない、未だにお役所仕事のままだ、なんていう批判もある。でも、職員側の想い。例えば、様々な事情があって荷物が送れたりすることだってあり得るのに、速達も追跡番号もない普通郵便で大事なものを送って「遅い!」と言われても……、とか、電話でこの荷物だけ特別に他の場所へ運んでほしいなんて言うのは不可能。融通が利ない、というけど、個人情報の保護とかそういう面を考えてほしい、なんていうのは間違いなくあると思う。そして、郵便局のシステムなんかをわかりやすく描いているところは、素直に面白かった。
ただ、この作品を純粋にミステリとして考えたときは、ちょっとミステリとしての謎を作るために無理な形にしていないか? と思うところはある。
1編目『誠実さの証明』。令和元年10月1日、という消印が押された二通の手紙。その消印が意味するもの……。(これを読んだ段階で)僅か2年ちょっと前の日付。その日が、郵便、社会にとって大きな意味があった日であり、その時に……という部分は面白い。面白いのだけど、消印の日付と絵柄だけを覚えていて……って、ちょっと都合がよすぎないか? という風に感じたりする。
3編目『ゆうパックを追いかけて』。ゆうパック配達員が何者かに襲われて昏倒する、という事件と、荷物が届かない、という問い合わせ。犯人が事件を起こした、というのは、それだけ切羽詰まっていたんだ、で納得できないでもないとして、どうやってその目的の配達員を特定したのだろう? と考えるとちょっとモヤモヤした感じになってしまう。
4編目『幻の同居人』。自分宛の手紙の内容がネットに流出している。犯人は郵便局員なのではないか? という漫画家からの問い合わせ。作中でも書かれているけど、実際にこの制度を悪用したストーカー事件とかはあった。そして、それをさらに一歩進めた、というアイデアそのものは面白いと思う。思うのだけど、犯人がその制度を悪用して自分で、っていうのは無理があるように思う。だって、1編目のテーマだった消印じゃないけど、それをするとその手紙だけ、妙に配達が遅い、ということになる。まして、ゆうパックとか書留とか対面配達が基本になっているものはどうしていたのだろう?(新たに出し直す、という手もあるけど、記録が残るからこれはこれでおかしくなるはずだし)
なんか、重箱の隅をつつくようなところなのだけど、ちょっと謎自体に無理があるようなエピソードが多かった印象。
No.6110

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
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東京東部郵便局。多くの手紙、荷物が集まるそこでは、日々、不可解な事件が……。局員たちが頭を悩ませるとき、社員食堂のおじさんが……
という連作短編集。全4編を収録。
物語の構成としては、郵便局の様々な部署で働く各編の主人公たちが不可解な出来事に頭を悩ませる。そんなとき、社員食堂を切り盛りするおじさん、上條が一言を発し、それで謎が解明される、という形の物語になっている。ただ、こういう形の作品だと、「日常の謎」っぽい感じなのだけど、4編中3編は犯罪行為が関わっていたりする。
郵便。民営化でどうのこうの、とは言われるものの、利用したことがない、という人はまずいないと思う。そして、その中で、融通が利かない、未だにお役所仕事のままだ、なんていう批判もある。でも、職員側の想い。例えば、様々な事情があって荷物が送れたりすることだってあり得るのに、速達も追跡番号もない普通郵便で大事なものを送って「遅い!」と言われても……、とか、電話でこの荷物だけ特別に他の場所へ運んでほしいなんて言うのは不可能。融通が利ない、というけど、個人情報の保護とかそういう面を考えてほしい、なんていうのは間違いなくあると思う。そして、郵便局のシステムなんかをわかりやすく描いているところは、素直に面白かった。
ただ、この作品を純粋にミステリとして考えたときは、ちょっとミステリとしての謎を作るために無理な形にしていないか? と思うところはある。
1編目『誠実さの証明』。令和元年10月1日、という消印が押された二通の手紙。その消印が意味するもの……。(これを読んだ段階で)僅か2年ちょっと前の日付。その日が、郵便、社会にとって大きな意味があった日であり、その時に……という部分は面白い。面白いのだけど、消印の日付と絵柄だけを覚えていて……って、ちょっと都合がよすぎないか? という風に感じたりする。
3編目『ゆうパックを追いかけて』。ゆうパック配達員が何者かに襲われて昏倒する、という事件と、荷物が届かない、という問い合わせ。犯人が事件を起こした、というのは、それだけ切羽詰まっていたんだ、で納得できないでもないとして、どうやってその目的の配達員を特定したのだろう? と考えるとちょっとモヤモヤした感じになってしまう。
4編目『幻の同居人』。自分宛の手紙の内容がネットに流出している。犯人は郵便局員なのではないか? という漫画家からの問い合わせ。作中でも書かれているけど、実際にこの制度を悪用したストーカー事件とかはあった。そして、それをさらに一歩進めた、というアイデアそのものは面白いと思う。思うのだけど、犯人がその制度を悪用して自分で、っていうのは無理があるように思う。だって、1編目のテーマだった消印じゃないけど、それをするとその手紙だけ、妙に配達が遅い、ということになる。まして、ゆうパックとか書留とか対面配達が基本になっているものはどうしていたのだろう?(新たに出し直す、という手もあるけど、記録が残るからこれはこれでおかしくなるはずだし)
なんか、重箱の隅をつつくようなところなのだけど、ちょっと謎自体に無理があるようなエピソードが多かった印象。
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