著者:武内涼


15世紀。比叡山延暦寺から秘伝の巻物が奪われ、守護に当たっていた父、同士が殺害された。延暦寺に使えるくノ一であるすがるは、伊賀の上忍・音無とともに、その奪還を命じられる。父の敵討ちを目指すすがるだったが、山名、細川ら、花の御所を巡る陰謀に巻き込まれていって……
第24回大藪春彦賞受賞作。
歴史小説……というよりも、伝奇アクションもの、というような感じの話かな?
冒頭に書いたような形で始まる物語。延暦寺を襲い、宝物を奪っていったのは誰なのか? しかも、その中には、封印されないと戦乱を巻き起こすという『阿修羅草子』も含まれている。京の都では山名、細川を中心に緊張が高まっており、どの勢力にも奪う動機はある。さらに、京の都では、山名が何かをしている、という歌が広まっていた。そして、すがるの前には、次々と強者たちが……。時代としては、応仁の乱が始まる目前というとき。足利将軍家の跡取りを巡り、さらに、そこに端を発しての陰謀が渦巻く。その中で、すがるを始めとして、様々な忍たちも策を張り巡らせ、そして、時に戦いを繰り広げていく。
個人的に忍者というのは、現在で言えば工作員、スパイ、暗殺者的なものを組み合わせたようなものだと考えているのだけど、本作の場合、そういう仕事をしつつ、同時に忍術などを使ってのバトルも数多く繰り広げる。ある程度、現実的な範囲内での忍術ではあるのだけど、雰囲気としては伝奇モノのような印象を受ける作品と言える。ただ、同時に、犯人は誰なのか? という謎解き要素もある。
ただ、そんな物語を彩っているのは、すがると音無の関係性かな? 八瀬と伊賀。それぞれしきたりなどが異なった流派ながら、相棒として任に当たることとなった二人。かつての屈辱から強さを追い求めるすがる。相棒となった音無の実力を認めながらも、そのやり方には納得できない部分も……。一方、音無は、ひたすら強さを求めるすがるに対し、自らの過去を重ね合わせ、危うさを感じることに。しかし、任務を続ける中、二人は……。バディものとしての面白さと、恋愛モノのような感傷。その双方が両立するのは、この設定だからこそ、だろう。
正直なところ、自分が何の情報もないままに読んだ、ということもあるのだけど、序盤の100頁くらいまでは何を目的にしているのか、とかがわかりづらく、ちょっと物語に入り込みづらかった部分があった。でも、それを乗り越えた後は、犯人が誰か? という謎と、次々と現れる敵……という展開を楽しむことが出来た。
No.6117

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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15世紀。比叡山延暦寺から秘伝の巻物が奪われ、守護に当たっていた父、同士が殺害された。延暦寺に使えるくノ一であるすがるは、伊賀の上忍・音無とともに、その奪還を命じられる。父の敵討ちを目指すすがるだったが、山名、細川ら、花の御所を巡る陰謀に巻き込まれていって……
第24回大藪春彦賞受賞作。
歴史小説……というよりも、伝奇アクションもの、というような感じの話かな?
冒頭に書いたような形で始まる物語。延暦寺を襲い、宝物を奪っていったのは誰なのか? しかも、その中には、封印されないと戦乱を巻き起こすという『阿修羅草子』も含まれている。京の都では山名、細川を中心に緊張が高まっており、どの勢力にも奪う動機はある。さらに、京の都では、山名が何かをしている、という歌が広まっていた。そして、すがるの前には、次々と強者たちが……。時代としては、応仁の乱が始まる目前というとき。足利将軍家の跡取りを巡り、さらに、そこに端を発しての陰謀が渦巻く。その中で、すがるを始めとして、様々な忍たちも策を張り巡らせ、そして、時に戦いを繰り広げていく。
個人的に忍者というのは、現在で言えば工作員、スパイ、暗殺者的なものを組み合わせたようなものだと考えているのだけど、本作の場合、そういう仕事をしつつ、同時に忍術などを使ってのバトルも数多く繰り広げる。ある程度、現実的な範囲内での忍術ではあるのだけど、雰囲気としては伝奇モノのような印象を受ける作品と言える。ただ、同時に、犯人は誰なのか? という謎解き要素もある。
ただ、そんな物語を彩っているのは、すがると音無の関係性かな? 八瀬と伊賀。それぞれしきたりなどが異なった流派ながら、相棒として任に当たることとなった二人。かつての屈辱から強さを追い求めるすがる。相棒となった音無の実力を認めながらも、そのやり方には納得できない部分も……。一方、音無は、ひたすら強さを求めるすがるに対し、自らの過去を重ね合わせ、危うさを感じることに。しかし、任務を続ける中、二人は……。バディものとしての面白さと、恋愛モノのような感傷。その双方が両立するのは、この設定だからこそ、だろう。
正直なところ、自分が何の情報もないままに読んだ、ということもあるのだけど、序盤の100頁くらいまでは何を目的にしているのか、とかがわかりづらく、ちょっと物語に入り込みづらかった部分があった。でも、それを乗り越えた後は、犯人が誰か? という謎と、次々と現れる敵……という展開を楽しむことが出来た。
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