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髭と猫耳

著者:周藤蓮



学術都市ラグノマで学ぶ貴族令嬢のエミリア。「獣腫」の猫耳を持つ彼女は、自らの将来について悩んだ末に一念発起し、自分探しの旅に出ることに。壮年の執事・ロイドと共に未知の世界へと足を踏み出す……
意外と重いテーマを描いてきたな、というのが読み始めてまず思ったこと。
「自分探しの旅」に出発! 何か、大荷物を背負い、さらに従者であるロイドからいきなり方向音痴だ、というのを指摘され……とくると、おきらくな旅モノっぽく感じられる。そして、最初の街で、季節外れの時期に現れた地面を水のように泳ぎ回る巨大な「精霊鯉」のトラブルに遭遇。勿論、そのトラブルを解決する、という流れになる辺りは、比較的オーソドックスな旅モノという印象。しかし、そのトラブルを解決した後に、その街の人から言われる「獣腫」というものに対する一種の偏見、そして、ロイドが言う「お嬢様はそんなことは知っている」の一言。そこから、一気にテーマとなる部分がクローズアップされていく。
ある意味で、一番、それが端的に表れていたのは第4話かな? 植物などが全く育たない冬の谷。そこに異変が起きている。調査に乗り出すエミリアたちだったが、彼女が獣腫であったことで彼女には出ていってくれ……と言う要請が。なぜなら、冬の谷の異変は獣腫によって引き起こされた、とされているため。
そもそも谷がどうしてそんな環境になったのか? そして、今、何が起きているのか? 伝承や憶測ではなく、科学的に調査を行って状況を解明したが、しかし……。人間の感情はそれで納得できるわけではない。そんな結末が印象的。
そして、第5話。学術都市。そこでは、獣腫を中心にした社会が出来ていた。だが、そこで起きっていたのは……
獣腫は、かつて忌み嫌われ、それを殲滅しようという戦争も起きた。現在だって差別は歴然としてある。だが、この街で起きているのは……。差別されていた側なのだから……という正当性の主張。その中で高まる不満。さらに、獣腫といっても、その中で出てくる症状には様々ある……。このエピソードのタイトルは『どいつもこいつも』とあるのだけど、まさに、そんなタイトル通りの状況。
エピソードとしてロイドの過去の掘り下げとか、そういう部分もあるのだけどそれ以上に、人間の業というか、そういうものを感じさせるエピソードだった。ただ、5話の後日談的な6話を見ていると、それを乗り越えられる、という期待もまたあるのかな? というのも感じたわけだけど。

No.6118

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Tag:小説感想周藤蓮

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