著者:彩藤アザミ


自らを「水憑き」と呼ぶ不村家。代々、産婆を営むその家には、一族に仇名すものを赦さないという「あわこさま」という怪異が……。昭和、平成を通しての一族を描く物語。
と、不村家に関わる面々6代を描く形の物語。
物語は1898年から始まり、現代まで。一応、連作短編形式にはなっているのだけど、正直、序盤のエピソードはかなり読みづらいと感じた。時代が時代なだけに、言葉などが古めかしい感じの物語になっているし、各編の結末部分について「こうだ!」という風にハッキリした結末になっていないものが多いため。
ただ、作品全体を通しての気味の悪さ、というのは印象的。
例えば、不村家に使える人々。多くの使用人を抱える家だが、そこで働く人々はなぜか、身体に障害を抱えた者ばかり。周囲からは悪趣味と言われるが、その障害は不村家に生まれた者にも……。そして、その「あわこさま」という存在が君臨していて……。そんな中で翻弄され運命を狂わされていく人々。そして、時代は下って……
現代に物語が近づくにつれ、不村家という存在感が薄れていくのだけど、けれどもあわこさまの存在は確かにある。そして、その不村家が一体、何をしていたのか? あわこさま、とは一体どんな存在なのか? という秘密に迫っていく……。怪異がいる、ということは当然の前提になっているのだけど、村にとって欠かせない存在であり、しかし、場合によっては忌み嫌われる役割をはたしていた不村家がその存在を守るために行っていたこと。その業とも言えるものの具現化でもある。その業がたまりにたまって……
さらに、そんな存在がいる、という中で、それぞれの人物たちが翻弄はされるのだけど、その一方で自らの弱さ故に落ちてしまうとか、怪異はきっかけになっているのだけど、同時にその弱さというのが悪循環に拍車をかけるというような「嫌さ」というのも良かった。
最初に書いたように、ちょっと読みづらいと感じた部分はあるのだけど、読み終わってその気持ち悪さ、業……そういうものが強く感じられた。
No.6119

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
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自らを「水憑き」と呼ぶ不村家。代々、産婆を営むその家には、一族に仇名すものを赦さないという「あわこさま」という怪異が……。昭和、平成を通しての一族を描く物語。
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物語は1898年から始まり、現代まで。一応、連作短編形式にはなっているのだけど、正直、序盤のエピソードはかなり読みづらいと感じた。時代が時代なだけに、言葉などが古めかしい感じの物語になっているし、各編の結末部分について「こうだ!」という風にハッキリした結末になっていないものが多いため。
ただ、作品全体を通しての気味の悪さ、というのは印象的。
例えば、不村家に使える人々。多くの使用人を抱える家だが、そこで働く人々はなぜか、身体に障害を抱えた者ばかり。周囲からは悪趣味と言われるが、その障害は不村家に生まれた者にも……。そして、その「あわこさま」という存在が君臨していて……。そんな中で翻弄され運命を狂わされていく人々。そして、時代は下って……
現代に物語が近づくにつれ、不村家という存在感が薄れていくのだけど、けれどもあわこさまの存在は確かにある。そして、その不村家が一体、何をしていたのか? あわこさま、とは一体どんな存在なのか? という秘密に迫っていく……。怪異がいる、ということは当然の前提になっているのだけど、村にとって欠かせない存在であり、しかし、場合によっては忌み嫌われる役割をはたしていた不村家がその存在を守るために行っていたこと。その業とも言えるものの具現化でもある。その業がたまりにたまって……
さらに、そんな存在がいる、という中で、それぞれの人物たちが翻弄はされるのだけど、その一方で自らの弱さ故に落ちてしまうとか、怪異はきっかけになっているのだけど、同時にその弱さというのが悪循環に拍車をかけるというような「嫌さ」というのも良かった。
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