著者:方丈貴恵


「犯人役をしてほしい」 大手ゲームメーカーからの依頼を受け、VRミステリーゲームのイベント監修をすることになった加茂冬馬。会場である孤島のメガロドン荘に集まったのは素人探偵8人。しかし、孤島についた途端、加茂たちは、その命をかけたデスゲームに巻き込まれることに。VR世界と現実世界、二つの世界で起こる事件の真相を解明することが、脱出する条件で……
竜泉家シリーズ第3作。物語として、前2作の主人公が双方登場。
著者の過去の作品と同様に、特殊設定で起こる事件を解明する特殊設定ミステリではある。あるのだけど、タイムスリップが前提であった『時空旅行者の砂時計』、人外の存在が前提であった『孤島の来訪者』とは違い、VRゲームという本作は現実に近い……のかも知れない。
ともかく、物語の事件。加茂を始めとした参加者8人は、それぞれが人質を取られてゲームに参加せざるを得ない。参加者の中には、犯人役と、主催者から送り込まれた執行人が紛れ込んでいる。犯人役が殺人を起こし、それを探偵たちが謎解きを行う。しかし、探偵の解答権は1回のみで、少しでも間違えれば執行人による(現実での)殺人の標的にされる。一方、犯人役は犯行を見破られれば負け。その上で、犯人役に殺害された被害者は、それで死、というわけではなく、ゲーム中に幽霊としてゲームに参加することが出来る。なので、犯人役は、殺人の際に被害者にバレてはいけない……
そんなルールの中でのゲームに……
この作品、VRゲームと現実がある、という部分が大きなポイント。主催者の言葉の中に散りばめられた数々のトリックのヒントと、VRゲームだからこそのトリック。ある意味では、何でもアリという感じに見せかけておいて、しっかりと論理的。さらに、主人公の加茂が、その犯人役ということで、追い詰められつつも、しかし、真相を暴かねばならない、というスリリングさも読者をひきつける上手いスパイスとして成立している。過去2作の場合は、非現実的なところを受け入れられるか、というのがあるけど、本作ならば、そういう問題はないわけだし。
まあ、真相に至ってみると、かなり複雑な話ではある。でも、その複雑なところをしっかりと理解できるように描き切っている、というのもこの作品の長所なのだと思う。
物語の終盤。シリーズの案内役であるマスター・ホラに関してのアレコレが出てきたりとか、過去作品を読んでいる人がニヤッとできる部分などもあって、凄く満足した読後感だった。
No.6125

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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「犯人役をしてほしい」 大手ゲームメーカーからの依頼を受け、VRミステリーゲームのイベント監修をすることになった加茂冬馬。会場である孤島のメガロドン荘に集まったのは素人探偵8人。しかし、孤島についた途端、加茂たちは、その命をかけたデスゲームに巻き込まれることに。VR世界と現実世界、二つの世界で起こる事件の真相を解明することが、脱出する条件で……
竜泉家シリーズ第3作。物語として、前2作の主人公が双方登場。
著者の過去の作品と同様に、特殊設定で起こる事件を解明する特殊設定ミステリではある。あるのだけど、タイムスリップが前提であった『時空旅行者の砂時計』、人外の存在が前提であった『孤島の来訪者』とは違い、VRゲームという本作は現実に近い……のかも知れない。
ともかく、物語の事件。加茂を始めとした参加者8人は、それぞれが人質を取られてゲームに参加せざるを得ない。参加者の中には、犯人役と、主催者から送り込まれた執行人が紛れ込んでいる。犯人役が殺人を起こし、それを探偵たちが謎解きを行う。しかし、探偵の解答権は1回のみで、少しでも間違えれば執行人による(現実での)殺人の標的にされる。一方、犯人役は犯行を見破られれば負け。その上で、犯人役に殺害された被害者は、それで死、というわけではなく、ゲーム中に幽霊としてゲームに参加することが出来る。なので、犯人役は、殺人の際に被害者にバレてはいけない……
そんなルールの中でのゲームに……
この作品、VRゲームと現実がある、という部分が大きなポイント。主催者の言葉の中に散りばめられた数々のトリックのヒントと、VRゲームだからこそのトリック。ある意味では、何でもアリという感じに見せかけておいて、しっかりと論理的。さらに、主人公の加茂が、その犯人役ということで、追い詰められつつも、しかし、真相を暴かねばならない、というスリリングさも読者をひきつける上手いスパイスとして成立している。過去2作の場合は、非現実的なところを受け入れられるか、というのがあるけど、本作ならば、そういう問題はないわけだし。
まあ、真相に至ってみると、かなり複雑な話ではある。でも、その複雑なところをしっかりと理解できるように描き切っている、というのもこの作品の長所なのだと思う。
物語の終盤。シリーズの案内役であるマスター・ホラに関してのアレコレが出てきたりとか、過去作品を読んでいる人がニヤッとできる部分などもあって、凄く満足した読後感だった。
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