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珍名ばかりが狙われる 連続殺人鬼ヤマダの息子

著者:黒川慈雨



珍しい名字の人々ばかりを狙う連続殺人鬼「ヤマダの息子」。そんなヤマダにより、大学生・不倫純の叔父・誠二が殺された。引きこもりで、ネット上で活動をしていた叔父の存在と、その殺害状況から被害者であるにも関わらず不倫家は世間から注目を集めてしまう。そんな折、純は珍名専門のハンコ職人にして、刺青の彫り師・一(まぶた)と出会うのだが……
著者のデビュー作が『キラキラネームが多すぎる』で、本作が『珍名ばかりが狙われる』。著者は名前ネタに何かこだわりがあるのだろうか?
なんていうことを思ったところでの内容について……
正直なところ、ちょっととっ散らかっている、という感じになった。
世間を騒がせている殺人鬼。一と出会い、これまでの事件を整理すると、被害者は皆、珍しい名字の人々ばかり。しかも、犯人は、その名字にちなんだ(?)形で被害者を殺害し、メッセージを残している。そして、被害者は、何らかの形で世間に名前を知られる人。例えば、陸上競技で全国大会に出場していたり、とか……。叔父もまた、ネット上での活動から一部では知られる存在だった……。そんな中、かつて作家として注目を浴び、しかし、盗作疑惑の中で消えた女性に対して殺害予告が出され……
私自身は、(恐らく)普通の名字なのだけど、私の親族に日本で一軒しかない名字の人がいたりする。不倫とかみたいなネガティヴな意味は全くない名字だけど、何か事件などに巻き込まれれば当然に注目を浴びるだろう、っていうのは思う。自分で言うのも何だけど、ニュースとかで珍しい名字の人を見ると「すげえ名前だな」と思うことはよくあるし。そんな状況に陥った純の苦しみ。そして、一と知り合って、同じく珍しい名字の人々と交流するようになって不満を共有したり……なんていうのはよくあること、なのかな? なんていうのは思ったり。その辺りのアルアルネタ(?)とかは素直に面白い。
また、その犯人が一体、何を目的にしているのか? なんていう謎にも惹きつけられた。ところどころに、犯人側視点の物語が入るから余計に。
……のだけど、読み終わってみると何か釈然としない部分が……
事件の背後に実は……というのは良いとしても、その「ヤマダの息子」の目的も、黒幕の目的も結局、何だかよくわからないままだったし、兄一家の家に引きこもり状態で居候している叔父と、そんな弟の間にあった絆とかも出てきて、一応、犯人との対比にはなるのだろうけど、結構、唐突な感じだし。さらに、最後の対決の場面。会話に合わせて、珍しい名字が登場したりするんだけど、それって必要? と思える部分も……
世間の眼、というか、そういう部分がテーマだったと思うのだけど、もっとそこをスマートにクローズアップしても良かったんじゃないかな?

No.6130

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Tag:小説感想黒川慈雨

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