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さあ、脱獄を始めましょう

著者:藤川恵蔵



都市パノプティコン。四方を山に抱えたこの街で暮らす少年ヴァンは、寮、学校、バイト先を往復するという平凡な日々を送っていた。そんなある日、彼は突如として透視能力に目覚める。その力を使い、女子の着替えを覗いてしまう。だが、その最中、その着替えを見た相手・ダイヤにその力を持っていることを知られてしまい、なぜか付きまとわれることに。そして、ヴァンは、この街の秘密を知ってしまい……
うーん……
とりあえず、このタイトルから予想していたものとは違っていたな、というのがまず思ったこと。まぁ、ネタバレっちゃあネタバレではあるのだけど、監獄の街に住むヴァンが、その街からの脱出(脱獄)をする話だと思うでしょ? でも……序章だとしても脱獄要素が皆無なんだよな……
いや、こういう書き方をするとつまらない、と思われるかもしれないけど、そうじゃないんだ。面白いのは、面白いんだ。
粗筋で書いたように、寮と学校とバイト先を往復するだけの日々を送るヴァンに訪れた変化。ダイヤに付きまとわれる形になり、知ったのは、この街が監獄であること。ダイヤたちは看守であること。そして、自分が犯罪者であること。その時の記憶はナノマシンによって記憶を奪われていること。そして、親友のアッシュ、幼馴染であるナガトの隠された秘密……と次々と「世界の真実」が見えてくる。
「人間は愚かです。見るな見るなと言われれば余計に見ようとする」
というのが、文庫裏表紙の粗筋の見出しとして描かれているセリフなのだけど、まさにそんな感じ。それまで、全く疑問も抱かずにいた日々が、ちょっとした一言によって全く違ったものだったという事実。それを知っても、今までのように過ごしていれば、同じように平穏な日々が送れたはずなのに、それを自ら壊してしまう。好奇心が人を成長させるのかもしれないけど、その一方で自滅へ導くこともある。しかし、そんなリスクをどうしてもと、なってしまう、という流れは素直に面白かった。
ただ、最初に書いたように、この巻の段階では全く脱獄とは関係がないんだよな。シリーズが進むにつれて、ということなのだろうけど、ちょっとは脱出したい、という方向は示してくれても良かったんじゃないかな? という思いはある。

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Tag:小説感想MF文庫J藤川恵蔵

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