fc2ブログ

無邪気な神々の無慈悲なたわむれ

著者:七尾与史



夫の正樹、息子の瑠偉、愛犬のパピーと共に家族旅行へやってきた辻村京子。向かう先は、「子供を神とみなす」という土着の宗教が根付く島・児宝島。道中で知り合った夫婦と共に上陸した家族だが、どうにも島の様子がおかしい。やってこない宿の人間。子供はいても、大人はいない。そして、繋がらない携帯。そして……
この前に読んだ著者の作品が『全裸刑事チャーリー』だったので、ギャップが……
読み始めての不気味さ、っていうのは流石。島へやってきた辻村一家。しかし、迎えに来る、という旅館の人間は現れず。子供の姿は見えても、大人の姿は見えない。しかも、その子供は何か、自分たちを見て怪しげな笑みを浮かべている。やむなく、旅館へと徒歩で向かうもののそこにも人の姿はない。一体、どうしたものか? そんなとき、京子たちはあるモノを見つけて……
敢えてジャンルで言うとパニックホラーという感じかな。こういう作品では、例えば、動物とか、虫とか、はたまた怪物とかが、っていう形になるんだけど、今作の場合は「人間の子供」。これって、一番、襲われる側としては恐ろしいよな、っていうのは思う。動物とかであれば、ある意味、容赦なくそれを殺して状況を脱出する、っていう手もあるけど、何の原因かわからずに襲ってくるとは言え、相手もまた人間。殺してしまえば、当然、「殺人」ということになる。でも、そのままでは……。しかも、そんな子供たちに自分たちの息子が連れ去られてしまい、息子を取り戻さねばならないという状況に陥ってしまう。
相手が子供ということで、短絡的だったりする部分はある。けれども、それなりに物事を考えて襲ってくる子供たち。しかも、人数差は圧倒的で、子供故の容赦のなさなどが怖さを演出していることは確か。その辺りは素直に楽しめた。
色々とツッコミどころはある。子供嫌いの灯台守と協力をするんだけど、灯台守が使っている道具……そんなに万能じゃないぞ、とか、中盤までは「それでも子供だから」という感じだったのに終盤は全く大人側も容赦しなくなっていたり、とか……おいおい、という部分も。そして、このオチ。
ある意味、この手のジャンルの作品ではお約束のオチではあるんだけど、「で、それで?」という感じはどうしても残る。これはこれでアリだとは思うのだけど……

No.6142

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想七尾与史

COMMENT 0