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ミス・パーフェクトが行く!

著者:横関大



厚労省のキャリア官僚・真波莉子。同期の中でもキレ者と言われる彼女も参加したネットでも公開される有識者会議で、与党の大物政治家が失言をした。世論は大きく騒ぐものの当の本人に謝罪の意思なし。そんな中、莉子は上司から「例のコネ」を使って事態を収拾するように命じられる。一方、シングルファザーの城島は、ある人物の運転手兼護衛という任務を受けて……(『某政治家の不適切発言による炎上を収束させなさい。』)
から始まる連作短編形式の物語。
序盤で明かされるので書いてしまうと、「例のコネ」というのは、実は莉子は現在の総理大臣の隠し子。そのため、父のコネ、さらに父が所属する派閥の長という大物政治家のコネを使うことが出来る。そんなコネの力、そして、彼女自身の能力の高さ、というのを駆使することで問題を片付けていく、という形の物語になっている。また、もう一人の主人公である城島は、そんな関係で民間人である莉子の運転手兼警護をすることに……と繋がる。
1編目は、冒頭に書いたように失言をした政治家に謝罪させる、というもの。しかし、その政治家は父の所属する派閥と激しく対立する派閥のナンバー2で、そういった派閥対立の関係もあって謝罪しようとはしない。そんな中で……。ここは、いかにも政治の世界のドロドロという感じで面白かった。ただ、対抗する派閥の手によって莉子が功労賞を辞める、という展開は予想外だったけど……
そして、2編目以降は、ファミレスの赤字店舗、コロナ禍で客が減った航空会社のリストラ案、赤字続きの市立病院の立て直し……と、職場なども全て変えての物語。そして、その中で城島と莉子の距離も近づいて……という展開付き。
正直なところ、ちょっと中途半端な感じがしたりする。そもそも、2編目はファミレスのアルバイト店員になったはずなのに、いきなり店長補佐という役割になり、しかも店の立て直し策をって、その流れ強引じゃない? という感じだし。まあ、そこに目を瞑るとしても、各編で莉子がやったことって、カンフル剤くらいにはなっても、抜本的な解決になっているのか? と思えるところがしばしば。実際、そのエピソードの締めで「他社も同じことを始めるはず」とか、そういうものもあるし。
各エピソードが終わった後にスッキリ感があるのは確か。ただ、よくよく考えると……って感じなので、1冊使って、しっかりと建て直す、みたいな感じだったら自分の好みには最大限合致したかな、という風に思えた。

No.6143

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Tag:小説感想横関大

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