コロウの空戦日記
- 11, 2022 20:25
- や行、ら行、わ行の著者
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著者:山藤豪太


あまりに無駄で無謀な戦争の、絶望的な敗勢の中で戦闘機乗りになった少女コロウ。配属されたのは「死なさずの男」と呼ばれるカノー率いる精鋭部隊。とある事情により、「死ぬ」ために戦闘機乗りとなったコロウだったが、仲間たちは「生」につなぎとめて……
第13回GA文庫大賞・銀賞受賞作。
まず、思ったことは、本当に「日記」形式だった、ってこと。
「〇〇日記」「〇〇日誌」みたいなタイトルの作品っていうのは色々とある。例えば『釣りバカ日誌』とかね。でも、そういうタイトルがついていても、それは日常を描いた作品という意味なことも多いのだけど、本作はタイトルの通り、訓練、出撃などを繰り返す戦闘機乗りのコロウがそのときの出来事を後に綴った「日記」として描かれている。ライトノベルでは珍しい形式だし、それ故の長所をしっかりと抑えているな、というのを感じた。
で、具体的な内容としては、カノー率いる部隊に配属されたコロウ。部隊についていくだけで、戦闘に参加しなくともよい、という初陣でいきなり撃墜を達成し、さらに、機械の補修などの技術も持っていることで注目を浴びる。しかし、彼女自身の目的は「死ぬ」ためで、無茶な操縦なども繰り返す。そんな彼女の「死にたがり」を察した隊長のカノーは、彼女を死なせないようにお目付をつけて……
冒頭から「死ぬ」ことを目的にしている、というのが明らかにされているコロウ。なぜ、そのようなことを? どうして戦闘機の修復などの高い技術を持っているのか? そんなことはわからないまま読者は読み進めることに。ただ、カノーがお目付をつけることを鬱陶しく感じつつも、ガサツな男所帯の部隊の中で変な仇名を付けられることに抵抗したり、休日にカノーの妻子と出会って歓待されることを楽しく感じたり……と、悲壮な覚悟とは裏腹な少女らしい(?)日常とその中の本音というのがまず楽しかった。しかし、その一方で、無能な国上層部の無茶苦茶な命令に翻弄される様も……
そして、そんな日記は突如、過去の日付のものになり、彼女の過去、死にたがりの真相が明らかにされ……
過去パート、これは本当に唐突に話が始まる。普通に時系列順と思ったものがいきなり変わるから。ただ、この「日記」がどういうものなのか、というのが序盤で明かされているために後半、そうなった事情が綴られたときはしっかりと納得できたし、しかも、その点を逆に利用した、という仕掛けは素直にうまい。物語の構成もしっかりと練られているな、というのに脱帽。
日記形式ということもあって、空戦の描写とかもどこか淡々とした部分はある。あるのだけど、コロウの悲壮な覚悟と、しかし、という日常の想い、というのはしっかりと伝わってきたし、だんだんとカノーを始めとする部隊の面々に対する愛着というのも湧いてくる。そして、先に書いた構成の妙。素直に面白かった、というしかない。
No.6147

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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あまりに無駄で無謀な戦争の、絶望的な敗勢の中で戦闘機乗りになった少女コロウ。配属されたのは「死なさずの男」と呼ばれるカノー率いる精鋭部隊。とある事情により、「死ぬ」ために戦闘機乗りとなったコロウだったが、仲間たちは「生」につなぎとめて……
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まず、思ったことは、本当に「日記」形式だった、ってこと。
「〇〇日記」「〇〇日誌」みたいなタイトルの作品っていうのは色々とある。例えば『釣りバカ日誌』とかね。でも、そういうタイトルがついていても、それは日常を描いた作品という意味なことも多いのだけど、本作はタイトルの通り、訓練、出撃などを繰り返す戦闘機乗りのコロウがそのときの出来事を後に綴った「日記」として描かれている。ライトノベルでは珍しい形式だし、それ故の長所をしっかりと抑えているな、というのを感じた。
で、具体的な内容としては、カノー率いる部隊に配属されたコロウ。部隊についていくだけで、戦闘に参加しなくともよい、という初陣でいきなり撃墜を達成し、さらに、機械の補修などの技術も持っていることで注目を浴びる。しかし、彼女自身の目的は「死ぬ」ためで、無茶な操縦なども繰り返す。そんな彼女の「死にたがり」を察した隊長のカノーは、彼女を死なせないようにお目付をつけて……
冒頭から「死ぬ」ことを目的にしている、というのが明らかにされているコロウ。なぜ、そのようなことを? どうして戦闘機の修復などの高い技術を持っているのか? そんなことはわからないまま読者は読み進めることに。ただ、カノーがお目付をつけることを鬱陶しく感じつつも、ガサツな男所帯の部隊の中で変な仇名を付けられることに抵抗したり、休日にカノーの妻子と出会って歓待されることを楽しく感じたり……と、悲壮な覚悟とは裏腹な少女らしい(?)日常とその中の本音というのがまず楽しかった。しかし、その一方で、無能な国上層部の無茶苦茶な命令に翻弄される様も……
そして、そんな日記は突如、過去の日付のものになり、彼女の過去、死にたがりの真相が明らかにされ……
過去パート、これは本当に唐突に話が始まる。普通に時系列順と思ったものがいきなり変わるから。ただ、この「日記」がどういうものなのか、というのが序盤で明かされているために後半、そうなった事情が綴られたときはしっかりと納得できたし、しかも、その点を逆に利用した、という仕掛けは素直にうまい。物語の構成もしっかりと練られているな、というのに脱帽。
日記形式ということもあって、空戦の描写とかもどこか淡々とした部分はある。あるのだけど、コロウの悲壮な覚悟と、しかし、という日常の想い、というのはしっかりと伝わってきたし、だんだんとカノーを始めとする部隊の面々に対する愛着というのも湧いてくる。そして、先に書いた構成の妙。素直に面白かった、というしかない。
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