著者:誉田哲也


東京都檜原村で発見されたのは、男性の首なし遺体。司法解剖の結果、死因は頸椎断裂。つまり、生きたままを首を切断されたことに。現場に臨場した刑事の鵜原は、地取り捜査に当たるが手掛かりは得られないまま。そんな中、残された手の痣から、鵜原は自らの過去に関わる人物であることを知る。一方、元キックボクサーの潤平は職場にアルバイトとして入ってきた美折に一目惚れする。だが、その美折が新興宗教団体・サダイの家の信者であることを知り……
ということで、新興宗教団体を巡っての物語。物語は、刑事の鵜原、元キックボクサーの潤平、そして、その宗教団体の汚れ役を担当するヤクザ・唐津という三つの視点で綴られる。
物語全体を通してみると、潤平が主人公、という感じかな? 職場のアルバイト・美折に一目惚れ。しかし、彼女は、新興宗教団体の信者。話を聞けば聞くほど、その生活、教義はおかしいとしか思えない。そんなとき、サダイの家を探っている五郎という男たちと出会い、より、その異常な実態を聞かされる。そして、美折を脱会させるため、ともに動くことに……
潤平が良い奴なんだよな。元キックボクサーということで、運動能力などは高いのだけど、決してイケメンというわけではない。けれども、とにかく一途。五郎たちに「バカ」なんて言われながらも、とにかくまっすぐで、一途に美折を助けたい。そのためには、手を汚しても……。五郎たち、仲間たちとの掛け合いも楽しい。
そして、その周囲にある鵜原の物語。そもそも、手の痣から、過去の事件との関りに気付いた鵜原。しかし、私情があることを察知されれば捜査から外されてしまう。相棒である梶浦に、そのことを感づかれながらも頑なに隠す。そんな中で、サダイの家を巡って次々と事件が……。それをやっているのは……と思うもののそれも言えない。過去に何があったのか、そういうのが明かされつつ……。そして、教団の汚れ役を買う鵜原。先代の教祖に惹かれ、現在の教祖のやり方には疑問を持ちながらも仕事をこなす。だが、何かがおかしい。その原因は、と感じている中……
結構、暴力沙汰とか、そういうものを描きつつも、というのは著者の作品らしさがあるし、その中での宗教団体の在り方が変質していく様の生々しさ、というのも良かった。その辺りは素直に楽しめた。
ただ、3つの視点が繋がった終盤の展開はちょっと拍子抜けかな。しっかりとまとめられてはいるのだけど、ちょっと急展開すぎるような気がする。特に唐津のパートは分量が少ないので、もうちょっとじっくりと掘り下げてほしかったな、という感じはする。
No.6148

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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東京都檜原村で発見されたのは、男性の首なし遺体。司法解剖の結果、死因は頸椎断裂。つまり、生きたままを首を切断されたことに。現場に臨場した刑事の鵜原は、地取り捜査に当たるが手掛かりは得られないまま。そんな中、残された手の痣から、鵜原は自らの過去に関わる人物であることを知る。一方、元キックボクサーの潤平は職場にアルバイトとして入ってきた美折に一目惚れする。だが、その美折が新興宗教団体・サダイの家の信者であることを知り……
ということで、新興宗教団体を巡っての物語。物語は、刑事の鵜原、元キックボクサーの潤平、そして、その宗教団体の汚れ役を担当するヤクザ・唐津という三つの視点で綴られる。
物語全体を通してみると、潤平が主人公、という感じかな? 職場のアルバイト・美折に一目惚れ。しかし、彼女は、新興宗教団体の信者。話を聞けば聞くほど、その生活、教義はおかしいとしか思えない。そんなとき、サダイの家を探っている五郎という男たちと出会い、より、その異常な実態を聞かされる。そして、美折を脱会させるため、ともに動くことに……
潤平が良い奴なんだよな。元キックボクサーということで、運動能力などは高いのだけど、決してイケメンというわけではない。けれども、とにかく一途。五郎たちに「バカ」なんて言われながらも、とにかくまっすぐで、一途に美折を助けたい。そのためには、手を汚しても……。五郎たち、仲間たちとの掛け合いも楽しい。
そして、その周囲にある鵜原の物語。そもそも、手の痣から、過去の事件との関りに気付いた鵜原。しかし、私情があることを察知されれば捜査から外されてしまう。相棒である梶浦に、そのことを感づかれながらも頑なに隠す。そんな中で、サダイの家を巡って次々と事件が……。それをやっているのは……と思うもののそれも言えない。過去に何があったのか、そういうのが明かされつつ……。そして、教団の汚れ役を買う鵜原。先代の教祖に惹かれ、現在の教祖のやり方には疑問を持ちながらも仕事をこなす。だが、何かがおかしい。その原因は、と感じている中……
結構、暴力沙汰とか、そういうものを描きつつも、というのは著者の作品らしさがあるし、その中での宗教団体の在り方が変質していく様の生々しさ、というのも良かった。その辺りは素直に楽しめた。
ただ、3つの視点が繋がった終盤の展開はちょっと拍子抜けかな。しっかりとまとめられてはいるのだけど、ちょっと急展開すぎるような気がする。特に唐津のパートは分量が少ないので、もうちょっとじっくりと掘り下げてほしかったな、という感じはする。
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