満鉄探偵 欧亜急行の殺人
- 13, 2022 21:28
- や行、ら行、わ行の著者
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著者:山本巧次


昭和11年。南満州鉄道株式会社資料課の詫間耕一は、総裁・松岡洋右から、社内で頻発する書類紛失事件の調査を命じられる。しかし、調査対象となった人物が殺害されてしまう。そこで浮かび上がった容疑者はソ連のスパイと思われる人物。その人物を追い、乗り込んだハルビン行きの急行列車で、その人物が殺害されてしまい……
密室殺人という本格モノ、と思わせておいて……という感じの話だったな……
物語の中心になる事件は、冒頭の粗筋で書いた急行の中で起きた殺人事件。満鉄の書類を奪ってソ連に流している、と思しきスパイ。そのスパイが、列車の個室で殺害された。個室には鍵がかかっており、しかも、彼が持っているはずの書類も消失。一体、それはどこへ消えたのか?
この殺人自体は、いかにも「本格モノ」という感じだし、実際、(トリックは小粒だけど)論理的に解明されている。
ただ、物語はむしろ、それをダシにしての当時の社会風景を描いているのかな? という印象が強い。
粗筋から、書類が紛失して……というのを書いたわけだけど、じゃあ、その紛失した書類というのは機密情報なのか? というとそうでもない。外部に漏れてしまうことが良いことではないが、しかし、漏れたとしても大騒ぎをするほどでもない。そんなものをソ連のスパイがなぜ? そんな調査を続ける耕一の前には、特務機関の少佐・諸澄が現れ、さらに総裁の松岡からは手伝いと称して辻村という男と共に行動するように命じられてしまう。さらに、調査を続けるために聞き込みをしたクラブのホステスも怪しげな動きを見せていて……
最初から何もかもを知っているような諸澄。なぜ、ともに動かねば、という辻村。どちらも共に調査を行ってはいるのだけどスパイという存在がいる以上、どこまで信じてよいのか? という疑問が浮かんでくる。何よりも、そんな大したものでもない書類がなぜ、そこまで大掛かりになっていくのか? という謎も出ていく。
真相まで行くと、文字通り耕一は手のひらの上でもてあそばれていたんだなぁ……という感じに。そして、どちらかと言えば小粒な物語でもある。でも、当時の時代背景だからこそ成り立つ話だし、また、謀略戦というのが繰り広げられる中で、耕一のように巻き込まれていった人々は数多くいたのだろう、というようなことを感じさせてくれた。
No.6149

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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昭和11年。南満州鉄道株式会社資料課の詫間耕一は、総裁・松岡洋右から、社内で頻発する書類紛失事件の調査を命じられる。しかし、調査対象となった人物が殺害されてしまう。そこで浮かび上がった容疑者はソ連のスパイと思われる人物。その人物を追い、乗り込んだハルビン行きの急行列車で、その人物が殺害されてしまい……
密室殺人という本格モノ、と思わせておいて……という感じの話だったな……
物語の中心になる事件は、冒頭の粗筋で書いた急行の中で起きた殺人事件。満鉄の書類を奪ってソ連に流している、と思しきスパイ。そのスパイが、列車の個室で殺害された。個室には鍵がかかっており、しかも、彼が持っているはずの書類も消失。一体、それはどこへ消えたのか?
この殺人自体は、いかにも「本格モノ」という感じだし、実際、(トリックは小粒だけど)論理的に解明されている。
ただ、物語はむしろ、それをダシにしての当時の社会風景を描いているのかな? という印象が強い。
粗筋から、書類が紛失して……というのを書いたわけだけど、じゃあ、その紛失した書類というのは機密情報なのか? というとそうでもない。外部に漏れてしまうことが良いことではないが、しかし、漏れたとしても大騒ぎをするほどでもない。そんなものをソ連のスパイがなぜ? そんな調査を続ける耕一の前には、特務機関の少佐・諸澄が現れ、さらに総裁の松岡からは手伝いと称して辻村という男と共に行動するように命じられてしまう。さらに、調査を続けるために聞き込みをしたクラブのホステスも怪しげな動きを見せていて……
最初から何もかもを知っているような諸澄。なぜ、ともに動かねば、という辻村。どちらも共に調査を行ってはいるのだけどスパイという存在がいる以上、どこまで信じてよいのか? という疑問が浮かんでくる。何よりも、そんな大したものでもない書類がなぜ、そこまで大掛かりになっていくのか? という謎も出ていく。
真相まで行くと、文字通り耕一は手のひらの上でもてあそばれていたんだなぁ……という感じに。そして、どちらかと言えば小粒な物語でもある。でも、当時の時代背景だからこそ成り立つ話だし、また、謀略戦というのが繰り広げられる中で、耕一のように巻き込まれていった人々は数多くいたのだろう、というようなことを感じさせてくれた。
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