著者:佐藤青南


シリーズ第8作となる連作短編集。全4編を収録。
という風に書いたのだけど、実は本作の存在を吹っ飛ばしてシリーズ第9作の『VS ミステリー作家・佐藤青南』を先に読んでしまっていた。まぁ、物語上、特に問題はなかったのだけど。
第7作の『セブンス・サイン』、第9作の『VS ミステリー作家・佐藤青南』が長編であるのに対し、本作は基本的に取調室という、このシリーズでのオーソドックスな形式になっている。
1編目『人気者を殺ってみた』。江東区で25歳のサラリーマンが殺害された。逮捕されたのは、新宿を根城にする暴力団の構成員。いつも通りの取り調べで容疑者の嘘を見抜いた絵麻だったが、それでも何かを隠している。それは一体何なのか? タイトルは『人気者』とあり、動画配信者であることは明かされているのだけど、そこにはあまり踏み込んでいないかな? という気はする。ただ、このシリーズはこういう感じで物語が進んでいく、という物語の基本形を示したエピソードのように思う。
2編目『歪んだ轍』。中目黒で発生した強盗殺人事件。宝飾店の店員2人が襲われ、7000万円が奪われた。しかし、その犯人グループの一人を逮捕。凶器は持っておらず、金も持っていない容疑者・鳥飼だったが、目出し帽をかぶって血だらけの手……からグループの一人であることは確実。だが、鳥飼は自分一人でやったと誰にでもわかる供述を……。彼は何を隠しているのか? そして、かつて鳥飼を逮捕した捜査員・筒井は前科はあるが、根は真面目な奴だったという……
今回の収録作の中では、一番、印象に残ったエピソードかな? 逮捕された鳥飼は確かに荒れていた時期もあるし、かつて、職場の人間に誘われて窃盗を働いた前科も持っている。しかし、出所後は筒井の元へ頭を下げに来るなど、真面目にやり直そうとしていたはず。なぜ、そんな鳥飼が……
真相が明かされたとき、物凄く暗い気持ちになる。筒井が言うように、根は真面目な鳥飼。家族への想いも本物だった。だからこそ決断したこと。しかし、それが……という皮肉な結末。勿論、鳥飼が逮捕されたときにその決断をしていなかったとしても同じような結末になった可能性はあるから、そのせいと言い切るわけにもいかない。ただ、鳥飼にとっては自分の決断が……と悔やまずにはいられない真相が辛い。
4編目『きっと運命の人』は、過去のシリーズに出てきたある人物が物語に関わってくる話なのだけど……正直なところ、その人物の記憶がほとんど残っていなかった。ただ一つ言えることは、その黒幕と言える人物が、絵麻と同様に強烈な存在感を示していたな、ということかな?
No.6166

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第7作の『セブンス・サイン』、第9作の『VS ミステリー作家・佐藤青南』が長編であるのに対し、本作は基本的に取調室という、このシリーズでのオーソドックスな形式になっている。
1編目『人気者を殺ってみた』。江東区で25歳のサラリーマンが殺害された。逮捕されたのは、新宿を根城にする暴力団の構成員。いつも通りの取り調べで容疑者の嘘を見抜いた絵麻だったが、それでも何かを隠している。それは一体何なのか? タイトルは『人気者』とあり、動画配信者であることは明かされているのだけど、そこにはあまり踏み込んでいないかな? という気はする。ただ、このシリーズはこういう感じで物語が進んでいく、という物語の基本形を示したエピソードのように思う。
2編目『歪んだ轍』。中目黒で発生した強盗殺人事件。宝飾店の店員2人が襲われ、7000万円が奪われた。しかし、その犯人グループの一人を逮捕。凶器は持っておらず、金も持っていない容疑者・鳥飼だったが、目出し帽をかぶって血だらけの手……からグループの一人であることは確実。だが、鳥飼は自分一人でやったと誰にでもわかる供述を……。彼は何を隠しているのか? そして、かつて鳥飼を逮捕した捜査員・筒井は前科はあるが、根は真面目な奴だったという……
今回の収録作の中では、一番、印象に残ったエピソードかな? 逮捕された鳥飼は確かに荒れていた時期もあるし、かつて、職場の人間に誘われて窃盗を働いた前科も持っている。しかし、出所後は筒井の元へ頭を下げに来るなど、真面目にやり直そうとしていたはず。なぜ、そんな鳥飼が……
真相が明かされたとき、物凄く暗い気持ちになる。筒井が言うように、根は真面目な鳥飼。家族への想いも本物だった。だからこそ決断したこと。しかし、それが……という皮肉な結末。勿論、鳥飼が逮捕されたときにその決断をしていなかったとしても同じような結末になった可能性はあるから、そのせいと言い切るわけにもいかない。ただ、鳥飼にとっては自分の決断が……と悔やまずにはいられない真相が辛い。
4編目『きっと運命の人』は、過去のシリーズに出てきたある人物が物語に関わってくる話なのだけど……正直なところ、その人物の記憶がほとんど残っていなかった。ただ一つ言えることは、その黒幕と言える人物が、絵麻と同様に強烈な存在感を示していたな、ということかな?
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