fc2ブログ

誰かがこの町で

著者:佐野広実



弁護士事務所で調査を請け負っている真崎は、失踪した自分の家族のことを調べてほしい、という女性についての調査を請け負う。その女性は、自分の雇い主である弁護士の友人の娘を名乗っているのだが、本当なのかもわからない。だが、そんな女性について調べる中、ある住宅街にいたことがわかってきて……。一方、開発によって生まれた住宅地に暮らす千春は5年前、息子を何者かに殺害されていた。そんな彼女の家の隣に、望月という一家が越してくる……
こわっ! まずは、そんなことを思わざるを得ない。
ネタバレと言えばネタバレなのだけど、すぐに判明するので最初に書いてしまうと、真崎のパートと千春のパートは時系列が異なっており、千春のパートが過去となる。そして、真崎が調べることとなる女性の家族というのが、千春の隣人となる望月家の娘……らしいということも。
で、真崎は、その女性・望月麻希と共に調査を始めるのだが、そこで感じるのはとにかく、その住宅に対する違和感。バブル時代に開発され、高級住宅地として売り出された町であるが、調査を進める真崎らに対して町の人々は常に敵対的。真崎らを監視し、本屋で万引きをする少年を捕まえようとすると、なぜか街の人々からは自分が少年たちにイチャモンを付けた存在として扱われるなど……。そして、そんな中で、街について知る者は、冊子に書かれた成り立ちは全くの嘘であるという。一方、千春。息子が殺害される、という悲劇に見舞われた彼女だが、そんな町を護るため、として町内会はどんどんおかしな方向へと進んでいく……。
物語の中心は現代パートである真崎の話なのだけど、印象に残るのは過去パートである千春。
治安が良く、人々が協力し合う街として紹介されるエリア。しかし、千春の目に映るのは明らかに異様な姿。息子の事件について、外国人が……という噂が出る中、その外国人を突き上げようとする人々。さらに、子供を護るため、街を護るため……と強化されていく自治会。無論、それだけならば良いのだが、防災訓練やらに一部の有力者の意見ばかりが反映されるように。さらに、そんな違和感を感じた者に対しては……。そんな町の雰囲気に飲み込まれていく夫。一方、そんな町の様子に千春と同じく違和感を感じる隣家の望月家には嫌がらせがされるようになって……
真相が何なのか? という点については、正直、そこまでの驚きはなかった。というか、読めば読むほど納得できる。
ただ、それよりも、その街の在り方が印象に残る。作中で描かれる出来事は明らかに常軌を逸したものと言える。ただ、「ここではこういう慣習があるから」なんていうローカルルールがまかり通って、なんて息苦しさは自治会とか、PTAとか、はたまた会社内とか、至る所にあるものだろう。そして、その一方で、自分たちは悪くない。悪いのは外からの存在だ……みたいな一種の陰謀論はネットとかでもしばしば見かけるものと言える。極端ではあるのだけど、ローカル、グローバルを問わず、色々と点在しているものを考えざるを得ない。その「怖さ」を凝縮したのが本作で描かれていることのように思えてくる。
面白い。そう思えるのだけど、だからこそ怖い、とも感じずにはいられなかった。

No.6201

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想佐野広実

COMMENT 0