著者:稲羽白菟


「わたしは母に毒を飲まされた」 ノートに残された不可解な言葉。そんなノートを見た文楽の三味線引きが失踪した。奇しくも一座は、孤島での44年ぶりの公演を控えた状態。しかし、その島での44年前の公演では、不可解な殺人事件が起こっていた……
第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞準優秀作。
まず、最初に書くと……特にこれと言った情報を仕入れずに読んだ結果……「文楽」って何だろう? という部分で困惑したことを告白しておく。
知っている人は知っているだろうけど、これは人形浄瑠璃文楽。大阪で発達したもの。人形浄瑠璃自体にも全く詳しくない自分としては、その歴史の説明とかが綴られていくので、なるほど、と思いつつ、しかし、具体的に人名とかがわからなくて困るという、ちょっと混乱した状態になってしまった。多少なりとも、文楽とは、というのの情報を持っていた方が読みやすいかもしれない。
という部分はあったのだけど、ライターであり、探偵役である海神が友人である三味線奏者である弦二郎と共に島へ渡ってからは、素直な本格モノに。
先にも書いた通りその島では44年前、不可解な事件が発生。その公園に参加していた謎の奏者。密室状態の舞台から、その奏者は忽然と消えてしまった。一方で、首を切り落とす事件が起こり、犯人と目された男は自らその命を絶った。しかし、不可解なことが多く、そして、当時のことを知るものはノートの存在に何かを悟ったような表情。そんな中、島では関係者が転落死を遂げ……
本格ミステリとして、トリックはシンプルで事件の数自体も多くはない。むしろ、その事件を解明する中でだんだんと明らかになっていく、人間関係のアレコレの方がメインだな、というのを感じる。先に書いた、そもそもの文楽の世界における派閥争いであるとか、序盤はちょっと長く感じられた部分などがしっかりと意味を成しているのを感じるし、そういうものは一座の中でも……。そして、44年前という時代がどういう時代だったのか、ということから明かされる真実。
最初に書いたように、私は、そもそもの人形浄瑠璃、文楽、というものの知識が一切ないのでそこで困惑。そして、トリック自体もシンプルで思っていたのとは違ったな、という感想はどうしても出る(ただし、これは読者である自分の責任) それで入り込めなかった部分があるので、少し読む前に歴史などを勉強して読むと、もっと楽しめたかな、というのを思う。
No.6205

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
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「わたしは母に毒を飲まされた」 ノートに残された不可解な言葉。そんなノートを見た文楽の三味線引きが失踪した。奇しくも一座は、孤島での44年ぶりの公演を控えた状態。しかし、その島での44年前の公演では、不可解な殺人事件が起こっていた……
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まず、最初に書くと……特にこれと言った情報を仕入れずに読んだ結果……「文楽」って何だろう? という部分で困惑したことを告白しておく。
知っている人は知っているだろうけど、これは人形浄瑠璃文楽。大阪で発達したもの。人形浄瑠璃自体にも全く詳しくない自分としては、その歴史の説明とかが綴られていくので、なるほど、と思いつつ、しかし、具体的に人名とかがわからなくて困るという、ちょっと混乱した状態になってしまった。多少なりとも、文楽とは、というのの情報を持っていた方が読みやすいかもしれない。
という部分はあったのだけど、ライターであり、探偵役である海神が友人である三味線奏者である弦二郎と共に島へ渡ってからは、素直な本格モノに。
先にも書いた通りその島では44年前、不可解な事件が発生。その公園に参加していた謎の奏者。密室状態の舞台から、その奏者は忽然と消えてしまった。一方で、首を切り落とす事件が起こり、犯人と目された男は自らその命を絶った。しかし、不可解なことが多く、そして、当時のことを知るものはノートの存在に何かを悟ったような表情。そんな中、島では関係者が転落死を遂げ……
本格ミステリとして、トリックはシンプルで事件の数自体も多くはない。むしろ、その事件を解明する中でだんだんと明らかになっていく、人間関係のアレコレの方がメインだな、というのを感じる。先に書いた、そもそもの文楽の世界における派閥争いであるとか、序盤はちょっと長く感じられた部分などがしっかりと意味を成しているのを感じるし、そういうものは一座の中でも……。そして、44年前という時代がどういう時代だったのか、ということから明かされる真実。
最初に書いたように、私は、そもそもの人形浄瑠璃、文楽、というものの知識が一切ないのでそこで困惑。そして、トリック自体もシンプルで思っていたのとは違ったな、という感想はどうしても出る(ただし、これは読者である自分の責任) それで入り込めなかった部分があるので、少し読む前に歴史などを勉強して読むと、もっと楽しめたかな、というのを思う。
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