fc2ブログ

ゴッドマザー

著者:中村啓



元人気女優で、現在は芸能事務所の社長である東堂美都子。期待の所属女優・山崎妃彩を主演とした映画の撮影が続く中、世間を騒がせた無差別大量殺人の犯人として逮捕された容疑者の弁護士から、容疑者と面談をしてほしい、という呼び出しを受ける。そして、面談した容疑者が彼女に語ったことは……
長編、ではあるのだけど、印象としては連作短編みたいな構成。
物語は5章構成になっており、冒頭に書いた粗筋は第1章。若いころから、結婚、離婚を繰り返しながらも人気女優となった美都子。しかし、芸能界のボスの誘いを断ったことで干されてしまった、という過去を持つ。その後、顔に傷を負ってしまったこともあり女優業を引退し、芸能事務所を立ち上げ。逆境もあったが力をつけてきた。ただ、家庭を顧みずに仕事に没頭したため、子供たちとは疎遠に……。そんな背景を持っている。
で、その第1章。冒頭に書いた通り、事務所期待の若手女優・山崎妃彩。そんな彼女がトラブルの火種を抱えている。世間を騒がせている殺人犯から告げられた美都子。それは本当なのか? 子飼いの調査員にその事件を調べさせるが、その辺りから映画の出資者が撤退していく。そして……。美都子は、その火種を知っているが、読者にはわからない。そのような中で美都子が色々と画策し、傷は負ったものの一応、まとめたと思ったところで新たなトラブルの種が出て……で第1章は終了。
その後、第2章から第4章は、美都子の子供たちの物語。地下アイドルから、賃金などが払われていない、という相談を受けた弁護士。仲間から、有名俳優に襲われたと相談を受けたモデル。女優の麻薬使用疑惑を捜査する刑事。それぞれ、芸能関連の事件ではあるが、母親の事件とは違う話をそれぞれ抱えて物語が進んでいく。そして、それぞれ窮地に陥り、母の無茶振り、それとバーターの情報で解決していって……で、第1章から直接つながる第5章へ。
全く知らない世界の話ではあるけど、報道とかでも色々と事件とかが起きている芸能界。その有象無象がある中で生きている美都子の強さ。その中での、強かな姿というのは印象的。時に強引に、時には柔軟に物事を進め、しかも、しっかりと利益へと繋げていく様は爽快。そこは楽しかった。ただ、美都子のたくらみに協力することになる存在を掘り下げる必要があったのは確かだが、2章から4章と別主人公の話になるので、ちょっとぶった切り感は感じざるを得なかった。敢えて、読者に情報を伏せて、というのも多かったし。
あくまでも好みの問題なのだけど、美都子中心で描いてくれても良かったのにな、という思いも残ったりはする。

No.6213

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想中村啓

COMMENT 0