著者:本城雅人


7年前、児童誘拐殺害事件において大誤報を打ち、中央新聞社社会部から埼玉支局へと飛ばされた関口豪太郎。そんな中、埼玉県東部で、小学生の女児を狙った誘拐未遂事件が起きる。犯人は二人組だった、という証言から、豪太郎の頭に浮かぶのは、自分が飛ばされるきっかけとなった事件。逮捕された犯人は一人で、死刑となっていたが、その時にももう一人いる、という情報があって……
第38回吉川英治文学新人賞受賞作。
ミステリのジャンル分けで、「警察小説」と呼ばれるものがある。これは、警察官が主人公で、事件を追うのだけど、その捜査を進める中で部署ごとの争い、管轄での争い、なんていうのがあり、そういうイザコザも含めての物語と言える。さて、本作を考えると、主人公は関口豪太郎を中心とした新聞記者たち。事件は、児童誘拐殺人事件。だけど、その事件の報道を巡り、新聞社内での様々な確執などが描かれることを考えると「新聞小説」とでも言えるのかな、と思う(もっとも、「新聞小説」というと新聞に連載されている小説っぽいけど)
で、先に書いた粗筋。7年前に起きた児童誘拐殺害事件。豪太郎らは、取材により犯人は二人組であったらしい、という情報をつかんでいた。そして、その一人が逮捕され、警察はそのアジトに重機を伴って向かった。アジトには、誘拐され、行方不明の少女がいるはず。しかし、重機を使ってということは……で、少女が殺されているもの、として報道してしまったが、実際には生きており、もう一人の犯人の情報はあやふやなまま単独犯として事件は解決した……となった。その結果、豪太郎は飛ばされ、彼の取材チームもバラバラに。だが、二人組という部分は頭に残っており、埼玉の事件で同一犯の可能性を模索し始める、という形で進んでいく。
で、まぁ、この中心にいる豪太郎。まず、彼はかなりクセの強い人物。確かに、取材能力とかは優れているのだけど、暴走しがちで上司らとの折り合いは悪い。その部下であった祐里は現在も本社にいるが、豪太郎からの連絡に呆れつつ協力をする。同じく豪太郎の部下であった松本博史は、事件後、社会部から整理部(紙面の構成などをする部署)へ異動となっている。豪太郎の上司であった外山は誤報の影響もあり、出世が遅れ、豪太郎に対しての怒りを抱えている。なので、豪太郎の行動を快く思っていない。だが、同時に他紙にすっぱ抜かれることも気にしている……
7年前の事件の、もう一人は誰なのか? 現在の事件と過去の事件。二つの事件が繋がっている、と確信はしつつも確証は持てず、しかも過去の確執などから記事にすること自体も反発を受ける。しかし、それでも豪太郎はあきらめず……。その新聞社内での、アレコレ。豪太郎らの、とにかく真相を。その姿がひたすらに印象的な物語だった。
事件の方は、終盤、急転直下に判明するのだけど、これは警察が主人公じゃないから仕方がないのだろうな。
No.6222

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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7年前、児童誘拐殺害事件において大誤報を打ち、中央新聞社社会部から埼玉支局へと飛ばされた関口豪太郎。そんな中、埼玉県東部で、小学生の女児を狙った誘拐未遂事件が起きる。犯人は二人組だった、という証言から、豪太郎の頭に浮かぶのは、自分が飛ばされるきっかけとなった事件。逮捕された犯人は一人で、死刑となっていたが、その時にももう一人いる、という情報があって……
第38回吉川英治文学新人賞受賞作。
ミステリのジャンル分けで、「警察小説」と呼ばれるものがある。これは、警察官が主人公で、事件を追うのだけど、その捜査を進める中で部署ごとの争い、管轄での争い、なんていうのがあり、そういうイザコザも含めての物語と言える。さて、本作を考えると、主人公は関口豪太郎を中心とした新聞記者たち。事件は、児童誘拐殺人事件。だけど、その事件の報道を巡り、新聞社内での様々な確執などが描かれることを考えると「新聞小説」とでも言えるのかな、と思う(もっとも、「新聞小説」というと新聞に連載されている小説っぽいけど)
で、先に書いた粗筋。7年前に起きた児童誘拐殺害事件。豪太郎らは、取材により犯人は二人組であったらしい、という情報をつかんでいた。そして、その一人が逮捕され、警察はそのアジトに重機を伴って向かった。アジトには、誘拐され、行方不明の少女がいるはず。しかし、重機を使ってということは……で、少女が殺されているもの、として報道してしまったが、実際には生きており、もう一人の犯人の情報はあやふやなまま単独犯として事件は解決した……となった。その結果、豪太郎は飛ばされ、彼の取材チームもバラバラに。だが、二人組という部分は頭に残っており、埼玉の事件で同一犯の可能性を模索し始める、という形で進んでいく。
で、まぁ、この中心にいる豪太郎。まず、彼はかなりクセの強い人物。確かに、取材能力とかは優れているのだけど、暴走しがちで上司らとの折り合いは悪い。その部下であった祐里は現在も本社にいるが、豪太郎からの連絡に呆れつつ協力をする。同じく豪太郎の部下であった松本博史は、事件後、社会部から整理部(紙面の構成などをする部署)へ異動となっている。豪太郎の上司であった外山は誤報の影響もあり、出世が遅れ、豪太郎に対しての怒りを抱えている。なので、豪太郎の行動を快く思っていない。だが、同時に他紙にすっぱ抜かれることも気にしている……
7年前の事件の、もう一人は誰なのか? 現在の事件と過去の事件。二つの事件が繋がっている、と確信はしつつも確証は持てず、しかも過去の確執などから記事にすること自体も反発を受ける。しかし、それでも豪太郎はあきらめず……。その新聞社内での、アレコレ。豪太郎らの、とにかく真相を。その姿がひたすらに印象的な物語だった。
事件の方は、終盤、急転直下に判明するのだけど、これは警察が主人公じゃないから仕方がないのだろうな。
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