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夢探偵フロイト マッド・モラン連続死事件

著者:内藤了



私立未来世紀大学夢科学研究所。単位不足で卒業が危うくなった大学生のあかねは、そこで研究を手伝えば単位がもらえる、と聞き、助手となる。そこには、夢についての研究をする風路亥斗教授(通称フロイト教授)、研究室で暮らす大学院生のオタ森こと森本が在籍していた。3人は、会社員が不可思議な飛び降りをした事件で、彼が見ていた、という夢と同じ夢をみた人間が存在する、という噂を知り調査を開始するが……
最近、著者の作品を片っ端から追いかけているような状況になっているけど、本作はフロイトシリーズの第1作。
物語の導入は、本当に冒頭に書いた通り。その噂の夢、というのは、森の中を逃げ回り、得体のしれない怪物に追いかけられる、というもの。そんな夢を、多くの人が見ている、ということでその調査を、ということで始まる。ネットのBBSなどで情報を募り、それを元にオタ森はCG動画としてそれを再現。すると、本当に多くの人から「私も」という声が。そんな中、実際にその夢をみる、という女性が研究所を訪れるのだが、再現映像を見た直後、行方不明になってしまう。さらに、「同じ夢をみる」という人々の声をよくよく調べてみると、それぞれちょっとずつ違いがあったりもする。それは何故なのか?
一応、物語の中に超常現象的なものも含まれてはいる。いるのだけど、基本は、その何故同じ夢をみるのか? 少しずつの差異は何なのか? そんなことを聞き込みやら何やらで調べる、という現実的な形で進んでいく。例えば「口裂け女」とかみたいな形の伝播もあるのかな? とか思ったのだけど、読んでいくうちにもっと具体的なミッシングリンクが見つかり、そして、一つの施設の存在が明らかになっていく。しかし、それがなぜ広範囲に広がる夢へと繋がったのか? その追いかけてくる怪物(フロイト教授は、マッド・モランと命名)は何なのか? その部分がかなり丁寧に描かれていて、読んでいてどんどん引き込まれた。
本作の主人公のあかね。これまで私が読んだ著者のシリーズの主人公と比べるとかなりライトなキャラクターであるのだけど、だからこそ、フロイト、オタ森が「解説役」としてうまく機能するなどいい塩梅になっている。事件そのものは、凄惨なものだけど、この掛け合いだからこそ重くなり過ぎない、っていう効果もあるし。施設の悍ましい実態。そんな場所が……という存在の悲しき死。そんな出来事があったからこそ、そういう部分も長所と感じられた。

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Tag:小説感想内藤了

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