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放課後レシピで謎解きを うつむきがちな探偵と駆け抜ける少女の秘密

著者:友井羊



猪突猛進で、それゆえにトラブルを引き起こしてしまう夏希は、高校2年になり陸上部から調理部へ転部する。同じ時期に入部した内気なクラスメイト・結と共に、部でパンを焼くことになるのだが、なぜか夏希たちのパンは含まらず……(『膨らまないパンを焼く』)
から始まる連作短編集。全8編を収録。
タイトル、そして、テーマも近い『スイーツレシピで謎解きを』という作品があるが、一応、物語としては別物。
各編、料理に関する蘊蓄。特に、各編、料理をして、しかし、なぜか失敗してしまい、その理由を探偵役である結が解明して……という形で物語が進行していく。で、その謎解きについては、料理に関する蘊蓄……というか、ある意味で化学的な知識という部分が大きい。
例えば、粗筋で書いた1編目。なぜ、夏希、結が作ったパンだけが上手く膨らまなかったのか、というのは文字通りに化学の問題そのもの。その中で、しかし、夏希と結、両者の距離が近づいて……
各編については、むしろ、その真相そのものよりも、両者の関係性。二人、そして、その他の面々が抱えているものを大きくクローズアップしている、という風に感じる。早い段階で、結の抱えている問題は明らかになるのだけど、その時点で、だとすれば夏希は……と、こういった問題に関して多少でも知識を持っていれば感じるだけに。ただ、夏希については、そこからの部分が印象的。
それを感じるのは7編目『熟していないジャムを煮る』。夏希は……という指摘がされた状況。しかし、いざ、診断を受けてみたい、という本人が望むのだが、それを母親は拒否……。この問題、家庭の状況であるとか、そういうものによって起こるものではない。また、言い方を変えれば「個性」という見方もできる(ただし、だからと言ってプラスになるとも限らない) しかし、診断されて言われる言葉は、人によってはネガティヴに聞こえてしまう。また、過去にあった(が、現在でも訴える人がいる)一部の論者によって語られる「教育の失敗」というレッテル。診断を受け、適切な方法論を学べば、本人が楽になるのに、そういったネガティヴな意識によってそれすら出来ない。そんな厄介さを上手く切り取っている。
その上で、夏希、結。それぞれ、色々な問題を抱えながらも、互いの人間性とか、そういうものもあって双方を尊重し、問題を解決していく姿が何よりも尊いな、と感じた。いや、本当、こんな友人がいたら、物凄く楽しいだろうな、と思えるほどに。

No.6256

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Tag:小説感想友井羊

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