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嘘つきは殺人鬼の始まり SNS採用調査員の事件ファイル

著者:佐藤青南



就活生のSNSアカウントを探し、その身元調査を行うネット上での探偵・潮崎。そんな彼のもとを訪れたのは、彼の調査で就職に失敗したという大学生・茉百合。問答の末、潮崎は彼女を強制的にアルバイトとして雇うことになってしまう。そんな中、茉百合が見つけたアカウントに、殺人事件の被害者宅の写真を投稿しているのを見つけて……
すごく計算された作品だな、というのを思う。
まず、SNSでの身元調査を行う、という潮崎。自他ともに認める通り、その仕事はロクでもない、というもの。企業としては、そりゃ、問題発言とかをしているような存在を雇う、というのはリスク要因になるわけでそれを、というのは納得できる。しかし、表垢ならばともかく、裏垢はそうそうできるものではない。ではどうするか? いくつものアカウントを持ち、そのアカウントを「育て」て、鍵垢になっている裏垢をフォローする。そして、その発言などをチェックする。
……理屈としてはわかるのだけど、それを懇切丁寧に描かれると、茉百合じゃないけどドン引き。でも、半ば強引に、しかも、アルバイト代は出世払いという茉百合は、その業務で予想以上の成果をあげていく。そして、そんなときに茉百合が見つけたアカウント……
そのアカウントに載っていた写真は殺人の被害者のアパートのもの。さらに、そのアカウントのフォロワーには他にも音信不明な者が……。しかし、警察に行っても相手にされないし、そのアカウントが殺人鬼である証拠も何もない。それでも何か怪しげなものを感じた潮崎らは、そのアカウントを調べるが、潮崎の周囲で異変が起こり始める。
ここまで、潮崎の調査方法とかが、かなり下種というようなことは書いていたのだけど、私生活においても借金を重ね、離婚した妻子に対しても不誠実と、はっきり言えばロクデナシそのもの。そもそも、ある意味では自分の敵のはずの潮崎の元で、なぜ茉百合が働き始めたのか? そして、犯人の正体……。読んでいる最中は、いろいろと無理がないか、と思われた部分が、それぞれ、しっかりと意味を持っていたのだな、というのが読み終わって思う。そして、その物語の結末も……
かなり後味の悪い結末ではある。でも、私生活のひどさ、潮崎自身が気づかずに引き越していたこと。それらを考えると、この結末は因果応報ということになるのだろう。それらがすべて回収されているところに、何よりも「上手い」「計算されているな」と感じた。

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Tag:小説感想佐藤青南

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