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文藝モンスター

著者:二宮敦人



ジャンルは何でもアリ、ということで知られる増田文学賞。その受賞作家たちは、年に一度、旅館に集まって「増田飲み」と呼ばれる打ち上げを行う。今年は、受賞したばかりの新人に加え、鬼と呼ばれる編集長も参加するらしい。だが、時間になっても現れない編集長に何人かの作家。そして、旅館に泊まっていた作家の卵が惨殺体で発見され……
形としてはミステリだけど……という感じかな?
物語は、増田賞を受賞したばかりの新人作家・笹野が、ホラー作家である雨漏とともに増田飲みが行われる旅館へ向かうことに。「編集者は敵だ」という雨漏。さらに、旅館で合流したほかの作家とともに、願ったものを消してくれる、という神社へ行ったりするのだが、その際に事件に。しかも、その死亡した作家の卵は、願いの中にあった「恋人の下半身を消してほしい」に呼応するように作家の卵の遺体は上半身だけ。さらに、雨漏の「編集長を消したい」に呼応するように参加するはずだった編集長は現れない……。これは、本当にその神様のせい?
物語は、途中、歴代の受賞作家たちのインタビューなどを交えながら、進んでいく。そして、上に書いたような形で事件が進んでいき……
探偵役である雨漏の推理。本人が言うように、何とか辻褄を合わせただけ、という部分が強いのは確か。でも、不可解な状況を文字通りに整理して、しっかりと一つの推論としてまとめ上げる。そのためには、いろいろな観察とか、そういうものが必須なのは間違いないし、そういう意味では(たとえ、最後が間違っていようとも)こういう形の物語で、辻褄の合うような推理を披露して見せる存在っていうのは一つの才能なのだろうな、というのを思う。
ただ、それ以上に思うのは、作中のインタビューなどを通じて語られる作家が、作家として活動をする理由。そして、編集者との関係。
承認欲求だったり、他に出来ることがない、だったり、モテたい、だったり、ただ書いていたらなっていた、だったり……そして、編集者もまた、仕事のパートナーではあるものの、時に理不尽な要求を突き付けてきたり、ただ金儲けのことしか考えていないようだったり……。無論、誇張している部分もあるのだろうけど、作家から見れば……っていうのはるのだろう。このあたり、もしかして、著者の思っていたことなども何割かは混じっている? なんてことを考え、そちらの印象が強く残った。

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Tag:小説感想二宮敦人

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