著者:荻原浩




全財産3円。ささいなきっかけから大手証券会社の社員から、ホームレスに転落した遼一。彼を待っていたのは飢えと、寒さと、人々からの侮蔑。住処を求めて訪れた公園で彼は、占い師と、美形のホームレス青年と出会う。そんな二人との出会いの中で遼一はある計画を思いつく。それは、新興宗教団体を設立する、というもので……
文庫で、上下巻合わせて900頁超とかなりのボリュームがある本作。ただ、それだけの分量があるからこその作品だと思う。
3部構成で綴られる本作。
第1部は、ホームレスになってしまった遼一の日々。証券会社を解雇され、妻には三行半。そして、家を失い、残り少ない財産も奪われた。そんな彼を待っていたのはまさに屈辱の日々。福祉事務所に行っても門前払い。家もなければ、食べるものもない。教会が行う炊き出しでは、聖書などを持つ者に対する明らかな依怙贔屓がまかり通り、ようやく作ったダンボールハウスも公共団体によって奪われる。何の手も差し伸べてくれないのに。そんな中で出会ったのが、相手の仕草などからその素性を見抜く達人である龍斎と、変わり者だが美形でカリスマ性を持った仲村。そして、この3人で新興宗教団体を作り出すことを決める。
そして、第2部はその団体「大地の会」の立ち上げ。そして、それが拡大する中での第3部……
そもそもが、遼一改め、木島が自覚しているように信仰に目覚めたのではなく、金儲けのためのインチキ宗教。龍斎のやり方に倣い、心理学などの方法を学び、相手を取り込んでいく。また、引きこもりの青年を取り込み、ネットでの拡大を狙う。さらに、地元の商店街なども取り込んでいき……、さらには芸能人まで……。順調に拡大していく大地の会だったが……
立ち上げをした3人だが、元々、地道に金儲けをしたい木島と、一発逆転を狙いたい龍斎。半ば、巻き込まれる形で教祖に祭り上げられた仲村。その時点で、思惑にはズレがあった。しかし、立ち上げ当初はそれも大した違いではなかった。しかし、拡大する中で……。生まれてくる派閥。木島に祭り上げられていた仲村の、自分をどうしたいのか? という戸惑い。さらに、信者たちが盛り上がれば盛り上がるほどに木島の中で生まれてくる自分への違和感。そんな渦の中に巻き込まれて行って……
動き出した集団。それは自ら作ったものであっても、自分の手を離れて暴走していく。これは、例えばデモ行進とか、そういうものでも起こること。まして、宗教と言い思想的に統一されたものであれば……。木島の行き着いた先。それはある意味、皮肉ではある。でも、この結末は必然だったのではないかと思う。
No.6276 & No.6277

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全財産3円。ささいなきっかけから大手証券会社の社員から、ホームレスに転落した遼一。彼を待っていたのは飢えと、寒さと、人々からの侮蔑。住処を求めて訪れた公園で彼は、占い師と、美形のホームレス青年と出会う。そんな二人との出会いの中で遼一はある計画を思いつく。それは、新興宗教団体を設立する、というもので……
文庫で、上下巻合わせて900頁超とかなりのボリュームがある本作。ただ、それだけの分量があるからこその作品だと思う。
3部構成で綴られる本作。
第1部は、ホームレスになってしまった遼一の日々。証券会社を解雇され、妻には三行半。そして、家を失い、残り少ない財産も奪われた。そんな彼を待っていたのはまさに屈辱の日々。福祉事務所に行っても門前払い。家もなければ、食べるものもない。教会が行う炊き出しでは、聖書などを持つ者に対する明らかな依怙贔屓がまかり通り、ようやく作ったダンボールハウスも公共団体によって奪われる。何の手も差し伸べてくれないのに。そんな中で出会ったのが、相手の仕草などからその素性を見抜く達人である龍斎と、変わり者だが美形でカリスマ性を持った仲村。そして、この3人で新興宗教団体を作り出すことを決める。
そして、第2部はその団体「大地の会」の立ち上げ。そして、それが拡大する中での第3部……
そもそもが、遼一改め、木島が自覚しているように信仰に目覚めたのではなく、金儲けのためのインチキ宗教。龍斎のやり方に倣い、心理学などの方法を学び、相手を取り込んでいく。また、引きこもりの青年を取り込み、ネットでの拡大を狙う。さらに、地元の商店街なども取り込んでいき……、さらには芸能人まで……。順調に拡大していく大地の会だったが……
立ち上げをした3人だが、元々、地道に金儲けをしたい木島と、一発逆転を狙いたい龍斎。半ば、巻き込まれる形で教祖に祭り上げられた仲村。その時点で、思惑にはズレがあった。しかし、立ち上げ当初はそれも大した違いではなかった。しかし、拡大する中で……。生まれてくる派閥。木島に祭り上げられていた仲村の、自分をどうしたいのか? という戸惑い。さらに、信者たちが盛り上がれば盛り上がるほどに木島の中で生まれてくる自分への違和感。そんな渦の中に巻き込まれて行って……
動き出した集団。それは自ら作ったものであっても、自分の手を離れて暴走していく。これは、例えばデモ行進とか、そういうものでも起こること。まして、宗教と言い思想的に統一されたものであれば……。木島の行き着いた先。それはある意味、皮肉ではある。でも、この結末は必然だったのではないかと思う。
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