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化物園

著者:恒川光太郎



全7編を収録した短編集。
一応、それぞの話の中で「ケショウ(化生)」という存在が示唆される部分はあるものの、基本的には各編で独立した物語となっている。
1編目『猫どろぼう猫』。スリルを楽しむために空き巣を繰り返す羽矢子。だが、空き巣に入った家で猫に引っ掛かれ、さらに、途中、奇妙な老人と出会い……。基本的に、変な人ばかり出てくるエピソード。結末部分は、結構、容赦のない終わり方が待ってはいるのだけど、そのそれぞれの出来事の連鎖とか、そういうのものは一周回って、ドタバタ喜劇のように思えるエピソードだった。
個人的に好きなのは4編目の『風のない夕暮れ、狐たちと』。お手伝いさんとして、田舎の館で働くこととなったたえ。優雅な奥様と、人見知りな息子・文。淫靡な役割も与えられつつもすごすたえだったが……。人には言えないような形での日々。でも、文とは通じ合い、平和な生活。だが、ある日、「ここにいるべきではない」と奥様に解雇され、それでも、と願った末に……。そこまでの平和な日常が、突如として不気味なものに思えてしまう状況の移り変わり。それは、ある意味では、語り部たるたえの自業自得。でも、頭の片隅でそれを理解しつつも……という葛藤に、そうだよなぁ、という思いを抱かざるを得なかった。
『胡乱の山犬』。幼いころから「残虐」を心に抱えた私。「残虐」は一度、発散をすればしばらく出てこないが、ある程度までたまってしまうと、それを抑えきることができない。そんな思いを抱えた男の生涯……。動物を殺し、弟を殺そうとし、人買いによって江戸の町へ。陰間としての日々を送りつつ……という中で出会った遊女。その遊女に気に入られ、しかし……。自分の中に救う、そんな「残虐」が恐ろしく、疎ましい。それによってことを起こしてしまう自分が……。しかし、そんな「残虐」が燃え尽きてなくなったとき、私に残ったものは……。「残虐」というのが、主人公にとって一体、何だったのか? これは、化物のようなものだったのか、それとも? そういうのを考えると、いろいろと頭に浮かんでくる物語だと思う。
個人的に、著者の作品って、「ホラー」と銘打たれてはいるものの、残虐さとか、怖さとか、というよりも幻想的だったりする印象を持っていた。でも、本作はそういう描写とかも結構あるし、ちょっとカラーが違うのかな? という気がしないでもない。ただ、その一方で、人間の心の持ち方で、とか、そういう部分については、日常の片隅には……という著者がよく扱うテーマの究極形の部分も含まれているのかな? とも感じられた。

No.6281

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Tag:小説感想恒川光太郎

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