著者:中村啓


予想以上のSCISの活躍により、その組織の拡充も視野に上がる中、その運営を任されいた警視長・島崎が何者かに殺害された。そんな混乱が生じる中、街では姿なき存在に女性が襲われる事件が続発。小比類巻らSCISは、その捜査を始めるが、防犯カメラの映像は文字通り、透明人間に襲われたような情況で……(『透明になる欲動』)
など、3編を収録した連作短編集。そして、「セカンドシーズン」開幕巻。
うん、やっぱりこのシリーズ大好き! 前巻までは、ボディハッカー・ジャパンなどを相手に、というところが中心になっていたのだけど、今回はその騒動が一段落ついた後、ということで、ファーストシーズン当初のようなワクワク感が楽しい。
てなわけで1編目が冒頭に書いたエピソード。防犯カメラの映像から、文字通り透明人間が女性を襲っている、という状況。そのトリックについては最上の登場(さらに言えば、犯人視点のパート)ですぐに明らかになるのだけど、この犯人の心情描写がなかなか面白い。透明人間状態になれる技術の開発。そうなったら……で、ちょっとした悪戯心で事件を起こす。さらに、そこからエスカレートしていき……。殺人、にまでやったことが発展しても、防犯カメラなどには映らない。穴だらけの犯行なのだけど、自分で自分を騙し、大胆になっていく。その部分の描写が実に秀逸だと感じた。
3編目『再び踏まれる月』。投資家であり、数多くの女性とも交際していることで知られ、宇宙飛行に挑むと発表している中森。そんな中森が、自分が吸っている煙草に、月の砂であるレゴリスを仕込まれた結果、喘息になったと訴えている。それを仕込んだのは誰なのか?
作中でも語られる通り、SCISが扱う事件としては異色の事件。レゴリスを仕込まれた、という部分では特殊な事件だけど、被害者である中森の派手な女性関係などがあり、愛憎の末のものとしか思えない。特殊な技術が使われているわけでもない。事件の概要はそうなのだけど……
宇宙開発というものが、ただ企業の域を超え、国などの力にもつながる、という部分。その一方で、投資家というのはあくまでも、利益を求めて活動をする存在であるという現実。ある意味で当たり前のことなのだけど、その当たり前のことを再認識させてくれるエピソードのように思える。
物語冒頭に示された(元)指揮官である島崎の死。これが、このセカンドシーズンを通しての事件の発端となることは間違いなく、一応、その事件の実行犯も逮捕はされるのだけど、背景に色々とあることが示唆され、それが今後、どう広がっていくのかも楽しみにしたい。
No.6286

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
予想以上のSCISの活躍により、その組織の拡充も視野に上がる中、その運営を任されいた警視長・島崎が何者かに殺害された。そんな混乱が生じる中、街では姿なき存在に女性が襲われる事件が続発。小比類巻らSCISは、その捜査を始めるが、防犯カメラの映像は文字通り、透明人間に襲われたような情況で……(『透明になる欲動』)
など、3編を収録した連作短編集。そして、「セカンドシーズン」開幕巻。
うん、やっぱりこのシリーズ大好き! 前巻までは、ボディハッカー・ジャパンなどを相手に、というところが中心になっていたのだけど、今回はその騒動が一段落ついた後、ということで、ファーストシーズン当初のようなワクワク感が楽しい。
てなわけで1編目が冒頭に書いたエピソード。防犯カメラの映像から、文字通り透明人間が女性を襲っている、という状況。そのトリックについては最上の登場(さらに言えば、犯人視点のパート)ですぐに明らかになるのだけど、この犯人の心情描写がなかなか面白い。透明人間状態になれる技術の開発。そうなったら……で、ちょっとした悪戯心で事件を起こす。さらに、そこからエスカレートしていき……。殺人、にまでやったことが発展しても、防犯カメラなどには映らない。穴だらけの犯行なのだけど、自分で自分を騙し、大胆になっていく。その部分の描写が実に秀逸だと感じた。
3編目『再び踏まれる月』。投資家であり、数多くの女性とも交際していることで知られ、宇宙飛行に挑むと発表している中森。そんな中森が、自分が吸っている煙草に、月の砂であるレゴリスを仕込まれた結果、喘息になったと訴えている。それを仕込んだのは誰なのか?
作中でも語られる通り、SCISが扱う事件としては異色の事件。レゴリスを仕込まれた、という部分では特殊な事件だけど、被害者である中森の派手な女性関係などがあり、愛憎の末のものとしか思えない。特殊な技術が使われているわけでもない。事件の概要はそうなのだけど……
宇宙開発というものが、ただ企業の域を超え、国などの力にもつながる、という部分。その一方で、投資家というのはあくまでも、利益を求めて活動をする存在であるという現実。ある意味で当たり前のことなのだけど、その当たり前のことを再認識させてくれるエピソードのように思える。
物語冒頭に示された(元)指揮官である島崎の死。これが、このセカンドシーズンを通しての事件の発端となることは間違いなく、一応、その事件の実行犯も逮捕はされるのだけど、背景に色々とあることが示唆され、それが今後、どう広がっていくのかも楽しみにしたい。
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