fc2ブログ

ブービージョッキー!!2

著者:有丈ほえる



アルテミスSを制し、2歳女王決定戦である阪神JFへ向かうことになったセイライッシキ。だが、颯太は大一番に挑むためにも、さらなる成長が必要と考えていた。そんなとき、美浦トレセンでも屈指の名門・上総厩舎から新馬の調教を依頼される。上総調教師の試験に合格し、その馬の騎乗を約束された颯太だが、同時に上総厩舎に所属する女性騎手・樫野秋桜の指導も頼まれて……
前巻からの続きなので、てっきり阪神JFに向けての話かと思ったら、まさかのセイライッシキのレースなし。厩務員キアラに至っては出番すらないとは……
ということで、上総厩舎で後輩騎手・秋桜の指導をする話。新人の女性騎手として、アイドル的な人気を博しながらも未だ、初勝利すら挙げられない秋桜。そして、そんな秋桜の中には劣等感が渦巻いていて……
やりとりとしては、完全に颯太に対して毒舌キャラという秋桜。その毒舌に、同時にボケとして参加する上総調教師……と、かなりギャグが多いのだけど、その根底は、現実の競馬のそれをしっかりと反映させているんだよな。
まず、秋桜が所属する上総厩舎。美浦でもトップクラスの名門厩舎ということで、それだけ見れば恵まれているように思える。しかし、名門厩舎で有力馬が多いということは、それだけ馬主の発言力も大きい。大レースに出るにあたって、やはり有力騎手を、と求められ、秋桜のような実績のない騎手は断られてしまう。さらに、競馬の世界にある「男社会」という事実……
ちょうど、これを読んでいる現在、新人の今村聖奈騎手が大活躍をしていて、その先輩と言える藤田菜七子騎手がこれまでの女性騎手の記録を更新していて、という状況。でも、それでも「女性だから」というような部分は残っているのは間違いない。レースを勝てば、記事とかになるけど、それ自体が、「女性騎手としては」という部分が大きいはずで、それがまだ平等に扱われていないことの証拠と言えるはず。その中で、騎乗依頼とかはないのに、「女性騎手だから」という別の誘いなどが来ることに対する秋桜の苛立ち、諦観。そして、そんな状況だからこそ、見えなくなってしまうこと……
成功しているように見える秋桜の先輩女性騎手・爽夏も抱えている葛藤。そういうものも目の当たりにして覚悟を決める秋桜。そして、同じ上総厩舎の馬で真正面からぶつかる颯太と秋桜の対決。ここは素直に「熱い」。
第1巻の段階で、颯太自身がどん底状態で……という状況だったので、ここで後輩騎手のエピソードというのは予想外だったのだけど、でも、面白かった。

No.6294

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想GA文庫有丈ほえる

COMMENT 0